首斬り発言の次は渡航自粛、中国在留邦人が直面する「反スパイ法」と「邦人襲撃リスク」に打つべき手は?
高市発言に端を発した抗議の応酬を受け、茂木敏充外相は11月12日、訪問先のカナダで、「日中関係の大きな方向性に影響が出ないよう、適切な対応を中国側がとるように求めていく」と穏やかな口調で話した。当の高市首相も中国を刺激する発言は控えている。
それらを「弱腰」と非難する人もいるが、「首を斬ってやる」と投稿した薛剣氏は、大阪総領事に就任して4年半が経ち、平均3年程度の大阪総領事の在任期間の中では最長クラスだ。国外退去を求めずとも離任→離日が近い。
中国外務省が11月14日の深夜、発表した日本への渡航自粛の注意喚起には、「中国公民近期避免前往日本」と明記されているが、これらは中国人を対象にした、あくまで任意のもので、「渡航禁止」ではない。
とはいえ、渡航自粛は、中国が、これまで口頭やSNSで行っていた抗議を、具体的な行動へとランクアップさせたことになる。日本としては、これ以上、中国との応酬を繰り広げることは得策とは言えず、今以上に関係が悪化すれば、高市首相が掲げる「強い経済」の構築にもマイナスになりかねない。
以下、予想される悪影響をまとめておく。
・中国にとってはドル箱で日本からすれば極めて貴重なレアアースの輸出入額が減る
・日本産農水産物の輸入規制撤廃が先送りされる
・中国経済の低迷や米中摩擦リスク回避などのため、中国に進出している日本企業は撤退の動きが顕著だが、不買運動などが起きると、その動きが加速する
・中国からのビジネス客や留学生が減少し、経済交流が冷え込み、中国人労働者が減り、少子化で学生確保が急務の大学経営にも支障が出る
・国別訪日客数では中国が1位(今年1月~9月期で約750万人)。その中国からのインバウンド客が激減する
さらに言えば、日中間で問題となっている中国での邦人襲撃にも注意が必要になる。
反スパイ法に基づく身柄拘束にも注意
「1年あまり前、深圳で日本の男の子が刺殺されたあたりから気をつけるようにしていますが、中国にとって戦勝80年で、かつての日本による侵略行為が喧伝されている中で、右寄りと見られる首相が誕生し、踏み込んだ発言をしているわけですから、夜道とかは1人で歩かないようにしています」(上海在住 日本人メディア関係者)
反日感情が高まれば、中国全土に10万人前後いるとされる日本人は、これまで以上に治安対策が求められるようになるほか、反スパイ法に基づく身柄拘束などにも最新の注意が必要となるだろう。
高市政権発足後、1カ月も経たない間に燃え広がった抗議の応酬は、日中両国にとって何らプラスにならない。
日本の領海や領空侵犯を繰り返し、台湾を包囲する形で演習を続ける中国の動きを見れば、高市首相の発言意図は理解できる。ただ、それは公言する性質のものではない。シミュレーションするなら水面下で続け、衝突に至らない外交努力を続けてほしいものだ。
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