首斬り発言の次は渡航自粛、中国在留邦人が直面する「反スパイ法」と「邦人襲撃リスク」に打つべき手は?

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過去を振り返れば、中国による猛反発は、2010年、尖閣諸島沖で中国漁船と海上保安庁の巡視船が衝突した事件、そして、2012年、日本政府が尖閣諸島の国有化した際、さらには、2021年、安倍晋三元首相が、台湾のシンクタンクとのオンライン会議で「台湾有事は日本有事」と語ったときなどにも生じている。

いずれも、中国が「核心的利益」(いかなる代償を払っても妥協できない国家利益)と位置づける「台湾」や「東シナ海」が絡む出来事で、その後、しばらく日中関係が冷え込む結果を招いた。

日本と中国は、10月31日、高市首相と習近平国家主席(以降は総書記と記述)が会談し、建設的かつ安定的な関係を構築することで一致したばかりだ。これ以上、批判合戦、抗議の応酬が続けば、関係改善の機運に冷や水を浴びせる形になってしまう。

強硬姿勢の裏に歴史的コンプレックス

なぜ、中国は、これほどまでに高市首相の「存立危機事態」発言に怒るのか。1つには、1840年のアヘン戦争以降、香港も台湾も「我々が弱いから列強に奪われてしまった」という歴史的コンプレックスがある。

アメリカの経済学者で、ハーバード大学ケネディ行政大学院の初代学長を務めたグレアム・アリソン氏は、著書『米中戦争前夜』(2017 ダイヤモンド社 p167‐168)の中で、「勿忘国耻(国辱を忘れるな)」というキーワードをあげ、習近平総書記は、中国の誇りを取り戻すため、被害者意識と報復意識にもとづいて行動していると分析している。

同様の分析は、朝日新聞台北支局長などを歴任した大東文化大学教授、野嶋剛氏の著書『新中国論』(2022年 平凡社 p39)でも見られる。

野嶋氏はこの中で、「強くなければまた奪われる。政府も人民も、領土を守るためには弱腰であってはならない。外部勢力に妥協してはならない」との表現で、領土問題をめぐる中国独特の思考や習近平総書記の香港や台湾に関する野望を説明している。

ただ、筆者がこれまで取材してきた限りでは、香港と台湾とでは微妙に位置づけが異なる。

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