首斬り発言の次は渡航自粛、中国在留邦人が直面する「反スパイ法」と「邦人襲撃リスク」に打つべき手は?

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すでに中国に返還された香港に関し、当時の中国メディアは「返還」や「回帰」と伝えてきたのに対し、台湾については「解放」と記述することが多い。

これは、1946年に始まった国共内戦(国民党と共産党の内戦)以降、台湾に逃げた国民党はいまだ降伏しておらず、勝利した共産党が建国した今の中国からすれば、まだ国内の平定に至っていないという認識でいるからにほかならない。

だからこそ、中国は、高市首相の「存立危機事態」発言を受け、「邪魔をするな」、「武力を行使して我々の前途を遮ることなど絶対に許さない」と猛反発していると解釈できる。

安定に寄与してきた「戦略的曖昧さ」を否定

もう1つは、日本がアメリカともども台湾問題でとってきた「戦略的曖昧さ」が、高市首相の発言で転換されたことへの怒りであろう。

アメリカの場合、1979年に制定された台湾関係法によって、台湾の防衛力強化や台湾との実務関係を推進するための枠組みが出来上がっている。

先の政権では、当時のバイデン大統領が「台湾を防衛する」と公言し、物議を醸したものの、サリバン大統領補佐官らが、政府としての対応を明確にしない「戦略的曖昧さ」を維持する考えを示し、「歴代の政権も、この戦略で台湾海峡の平和と安定の維持を可能にしてきた」と述べて、沈静化を図ってきた。

関税では強い姿勢を示すトランプ大統領でさえ、2期目就任以降、中国と台湾に関しては踏み込んだ発言を避け、10月30日に行われた米中首脳会談でも台湾問題に言及することはなかった。

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