タイタニック号見学ツアー事故で進行していたタイタンの損傷。層間剥離と小型旅客船舶規制の指摘が示す深海での備えとは
NTSBによれば、オーシャンゲートは調査潜水の計画に、緊急の際に通報すべき捜索救助当局を記載していた。だが、潜水作業前の事前連絡や、現場における緊急時対応手段の準備は義務づけていなかった。そのため、事故発生時に水上の従業員は捜索や救助のために取り得る手段がなかった。
NTSBによる結論と改善の提案
もし、これまでに述べたような緊急時対応の備えをしていれば、事故発生からタイタンの船体の発見はより速やかに行えていた可能性は高い。もちろんあの事故で乗員を救うことは実質的に不可能ではあったが、船体発見までの時間とリソースを節約することはできただろうとNTSBは結論づけている。
一方、沿岸警備隊による事故対応の主導と努力は、突然の通報にもかかわらず効果的に行われ、可能な限り速やかにタイタンの船体を発見することができたとした。
事故が起こったことについては、現在のアメリカの小型旅客船舶規制では、タイタンのような小型潜水艇の耐圧シェルに関して、既存の技術基準および船級協会基準に従ってその安全性を確保・運用するのに十分に対応していないともNTSBは指摘した。
そしてアメリカ沿岸警備隊に対しては、現行の小型潜水艇用耐圧シェルの運用に関する調査を専門家委員会に委託し、調査対象には少なくとも国内および国際的な設計・建設基準の利用可能性、乗船者の能力と資格認定、乗組員と乗客の区別、運用区分にかかわらずすべての潜水体の耐圧シェルを検査する必要があるのか否か、潜水艇の保守と運用、保管条件や曳航などの運用方法変更の影響、故障モードとベストプラクティス、緊急時対応手順などを含めるよう求め、調査結果は業界に周知徹底し、アメリカ内における規制を定め、必要に応じて関連する法改正や整備を実施することを求めた。
タイタニック号の沈没現場を訪れる手段を提供することは、同じような事故を二度と起こさないための調査研究や犠牲者遺族のためにも有意義なことだ。だが、タイタンに限らず、数千mの深海や水面での取り扱いにともなう船体へのストレスが何を引き起こすかを正しく理解・想定し、常にできる限りの備えをしておくことがいかに大切かを、タイタンの事故は訴えかけている。
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