「ブランド力ない」「勝てる戦場へ行く」元Jリーガー(30)が見据えた"将来"。特殊清掃という仕事にキャリアチェンジした本当の訳《後編》

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尾身さんが応援したいのは、現役を引退したアスリート。これまでに多くのアスリートが第2の人生で苦戦している姿を見てきたからだ。そのために、「いまは売り上げを伸ばして、自分自身がセカンドキャリアで結果を出している背中を見せたい」と言う。

将来的にはアスリートを雇用できる基盤を作るために、特殊清掃だけでなく、不動産売買や相続など、亡くなった後の手続きを総合的にサポートできるようになりたいと熱を込めて語る。

「特殊清掃は特別なスキルが必要です。だれにでもできないところを起点に広げていけば、競合他社に真似できない優位性を作ることができます。それはお客さんにとっても魅力になると考えています」

一括して仕事を受けることで収益アップにつながるだけでない。大切な人が亡くなって悲しんでいる遺族が、特殊清掃が終わったら、次は不動産売却、次は相続と、別々の業者に依頼して苦労するストレスを軽減できる。「遺族の気持ちにチームメイトとして寄り添いたい」と考える尾身さんらしい将来ビジョンだ。

80代の女性が残していった思い出の数々(写真:大澤誠撮影)

引退して、ようやくプロになれた

順調にビジネスを拡大している尾身さんだが、筆者には1つ気になることがあった。常に死と向き合う仕事は、精神的な負担もあるはず。つらくなることはないのだろうか。

「終わったらキッパリと忘れられるので、トラウマになって夢に出てくるようなこともありません」

サッカーをしていた頃の尾身さんは、決して切り替えが早いタイプではなかった。

「ミスを引きずってしまうというか、同じような場面になったときに『やばい、この間と同じ状況だ。同じミスはしたくない』とプレーが消極的になってしまう。きっと、ミスをしても次はいいプレーができるといいイメージを持てるくらいの“強メンタル”じゃないと、トッププロにはなれないんですよ」

特殊清掃を始めて、ようやくプロになれたと尾身さんは続ける。

「ずっとこの仕事をしている人からしたら、まだまだだろと言われるのは間違いないのですが、僕はいま自信をもってこの仕事をしています。少なくとも気持ちの面では、ようやくプロになれましたね」

前編:特殊清掃を仕事にした30代元Jリーガーの"覚悟"
山田 智子 フリーライター・カメラマン

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やまだ ともこ / Tomoko Yamada

日本サッカー協会勤務を経て、2013年に独立。フリーのスポーツライター・カメラマンとして、東海地方を拠点にバスケットボール、サッカー、フィギュアスケートなどさまざまなスポーツの現場を飛び回る。『Number』『中日新聞』など各種媒体に寄稿するほか、愛知県のバスケットボールWEBマガジン『愛B café』を運営。競技の魅力だけでなく、アスリートの知見のビジネス活用やスポーツを通じた街づくりにも関心を持ち、現場目線での取材・執筆を行っている。

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