かつて「電車の中で傍若無人に騒ぐ親子」を迷惑に感じた自分の経験が、その冷静さを生んでいる。子どもに寛容な社会は理想的だが、その価値観は全ての人に押し付けるものではない。このバランスを保ちながら子育てができるのは、今の年齢だからこそなのかもしれない。
独立したいが、安定も捨てがたい
しかし、山本さんは「まだ『地元の人』になりきれていない」と話す。山本さんは現在、都内のリハビリ施設での勤務をメインに、サブとして地元で開業した鍼灸院で働いている。過去に大病を患った(詳細は前編)山本さんは、鍼灸院を一時閉めざるを得ない状況に陥ったことがある。治療後に鍼灸院は再開したが、これだけでは収入が心許ないと感じ、病院向けに鍼灸のサービス事業を手がける会社の求人に応募。正社員として雇用されて以降、ダブルワークで収入を得るスタイルで身を立ててきた。
「でも、いずれは地元の人に向けて『地域の鍼灸院』としてやっていきたいというのが本音です。ずっと地元にいると、学生だった患者さんが社会人になってまた来院してくれたり、施術しながらお子さんの話を聞いたり、様々な人生に触れる機会が多いんです。自分の仕事自体が地域活動の一環のような気がして、楽しいんですよね」
もちろん外勤の仕事もやりがいはあるし、正社員の安定感は捨てがたい。子どもの教育資金もかかる時期だ。ちなみに、妻は出産を機に正社員として勤めていた会社を辞め、現在はフリーランスとして在宅ワークで事務関係の仕事を受けている。


















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