「偶然ではなく人を狙って襲っている?」 死者12人《クマ被害》山で起きている「残酷な現実」 こんなにも被害が出てしまった"根本理由"
実は横山教授は、5年前にもクマの数を減らさないと深刻な事態になると警鐘を鳴らしていた。クマの問題は、2010年ごろから続いている課題だと強調する。
もっとも、東日本と西日本とでは状況がまったく違う。西日本では個体数管理を10年前から実施し、個体数の増加を抑えている。一方、「(予算の問題などもあり)東日本では個体数管理が遅れてしまったことが増加の背景としてある」と分析する。
個体数管理とは、生態系のバランスを保ちながら、野生動物の調査・保全・捕獲を通じて個体数を適正に保つことで、人と野生動物の棲み分けを図ることである。
生活圏での出没が続く理由
クマが人の生活圏である市街地や人家周辺、道路に出没するケースが続いている。中には、「こんな所にも出るのか」といった事例も事欠かない。
10月には群馬県沼田市のスーパーマーケットに侵入したほか、長野県にある善光寺近辺でもクマが出没した。岩手県では盛岡市の中心部にある岩手銀行本店の地下駐車場に子グマ1頭が侵入。ほかにも、保育園や老人福祉施設にも現れている。
横山教授は、老人ホームや保育園では、食事の準備で大量の食べものを煮炊きすることがあるため、嗅覚が優れているクマが臭いをかぎつけて来ている可能性があると指摘する。
クマはまず、人間の活動が低下した里山などで放置されていた柿や栗などを食べ、「安全においしく食べられる」と学習した。「5年前くらいから、集落周辺で生活するクマが増加し、学習を重ねるうちに、人間はクマにとって『怖い生き物』ではないと判断している」という。
いわゆる「人慣れクマ」と呼ばれる個体で、人間側にも責任がある。環境省によると、クマは今年7月と8月、約7割が人の生活圏で出没している。
今年4月から8月末までの出没数は、過去5年間で最多の約1万6000頭となっている。



















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