「手術ムリ」から復活した愛犬。生死を分けたのは奇跡ではなく"飼い主の適切な判断"だった――獣医師の誤診から大切なペットを守る術
人間なら「お腹のこのあたりがキリキリ痛む」「めまいがする」と具体的に伝えられますが、動物の場合は飼い主による観察が情報のほぼすべて。しかも食欲不振、元気がない、嘔吐、下痢といった症状は、無数にある疾患の共通サインでしかなく、それだけでは原因を特定できません。
そのため、獣医師はそうした情報と身体検査、血液検査などの客観的なデータを組み合わせ、病気の原因を推定していきます。
獣医の「何でも診る」の落とし穴
人間の医療では、内科や外科、皮膚科、眼科など専門領域があります。しかし、日本の獣医療は1人の獣医師がさまざまな領域をカバーする「総合診療医(ジェネラリスト)」が基本です。
もちろん、循環器科や皮膚科、腫瘍科、外科などの分野で、高度な知識と技術を持つ専門医は存在しますが、その数は限られており、誰もが専門医の診察を受けられるわけではありません。
多くの“町の動物病院”では、原則として1人の獣医師が皮膚病から心臓病、がんまで対応しています。診断の精度に影響するのは、個々の獣医師の能力不足というよりもむしろ、1人の獣医師に求められる専門領域が広すぎるという避けがたい問題があるのです。
ちなみに、アメリカ獣医師会(AVMA)は、22の専門分野を公式に認めており、専門医の数は年々増加しています。このような国と比較すると、日本では専門医へのアクセスが限られているのが実情です。
また、獣医の診断をさらに複雑にしているのが、異なる病気がよく似た症状を示す「症状の重複」です。飼い主がこうした“診断ミスにつながりやすい病気”の知識を持つことは、愛犬・愛猫を守るうえで極めて重要です。
例えば、クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)と甲状腺機能低下症は、どちらも「脱毛」「元気消失」「皮膚病」といった症状を示します。診察だけで判断するのは難しく、確定診断にはACTH刺激試験などの特殊な検査が必要です。
正しい診断は、いくつかの検査と症状を総合的に評価して初めて下されます。特に注意が必要な犬と猫の疾患については、記事の最後に紹介します(すぐにチェックしたい方はこちらから)。


















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