ボスだけを見る欧米人 みんなの顔まで見る日本人 増田貴彦著

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ボスだけを見る欧米人 みんなの顔まで見る日本人 増田貴彦著

タイトルに「ボス」と「みんな」、「欧米人」と「日本人」いう言葉がある。そこで欧米と日本の企業文化の違いを論じた本だと思って読み始めたが、「ボス」と「みんな」を議論する本ではなかった。全体を貫くテーマは欧米文化圏と東アジア文化圏の認知の違いだ。

まず本書は、さまざまな実験によって、私たちの知覚のあいまいさを説明する。私たちは、だれでも同じようにモノを見て、同じように認識していると漠然と信じている。ところがその常識は間違いらしい。

視覚の基本的な情報である「色」についても、勝手に補正しているらしい。太陽光の下で「これは白だ」といったん認識すると、室内に持ってきて照明で見ても、同じ白だと思い込んでいる。しかし白熱灯の下で見れば波長が違うから、色が変わっているはず。しかし「同じ白」と認識してしまう。

貧しい家庭環境の子と、裕福な家庭環境の子がコインを見る時、貧しい子は豊かな子よりコインが大きいと認識している。貧しい子はコインが欲しいので大きく見えるらしい。

真っ暗な部屋での「オートキネティックエフェクト(自動運動効果)」の実験は、部屋の壁に緑色のライトを点灯し、合図が出たらどれくらい動いたかを判断するものだ。人間が暗がりで一点の光を見た場合、その光が動いていないにもかかわらず、動いていると知覚してしまう。参加者が一人で実験している場合、錯覚の程度はばらばらだ。

ここから先が面白い。参加者がお互いの回答を参考にできるようにして、何度も実験を繰り返していくと、3回目あたりから答えが似通ってくるのだ。この実験では正答がない。あいまいだ。そういう時に人間は他人の意見を参考にしながら、似通った結論に落ち着くそうだ。組織の文化が形成されていく理由は、この実験で説明できるらしい。

人間関係はあいまいなことだらけだ。企業内でも上司、同僚、部下がどう考えているかはわからない。そこでその社会で生きている人たちが共有するものの見え方を共有していく。それが文化になっていく。国の文化も、会社の風土も、社内の暗黙の約束事もそうして形成されていくと言う。

日米の学生を対象に絵画や写真を使った実験では、思考様式、認知様式の違いを検証している。アメリカ人は画面の目立つ対象に注意を集中する傾向があり、日本人は画面の背景にまで注意を払う傾向がある。

 

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