松林堂を出て、街道沿いの商店街をさらに歩いた。地元の皆さんが言うように、古い構えの建物がそこかしこにある。街全体のトーンもその歴史に合わせて整えられている印象だ。「品川区立城南小学校(品川区南品川2-8-21)」は150年の歴史を持つ。
創立は1874年(明治7年)、現在の場所からほど近い「熊野山父母報恩院 常行寺(南品川2-9-18)」の敷地に開校した。その後生徒数が増え、教室が手狭になったことから、現在の場所に移った。外観は旧街道にふさわしく、黒壁で統一されている。

校舎を見上げると、冒頭で紹介した某店主の言葉が思い返された。
「(祭り太鼓の)稽古が何カ月も前から始まるんだけど、その音がうるさいってクレームが入るんだ」
この小学校でも、そうした問題があるのかもしれない。
畳材料の卸業者も
そんなことを考えながら歩いていると、時代のかかった看板を掲げる商店が目に入った。青物横丁商店街を抜け、南品川商店街に入ってしばらく行った場所にある「佐古田商店(品川区南品川2-13-9)」は1917年(大正6年)の創業だ。
4代目代表の佐古田春実さんが話を聞かせてくれた。
「うちは畳材料の卸業者なんです。昔ながらのお家は今でも畳を使っているけど、新築のマンションなどは和室を作らない物件も増えています。だんだんと畳が使われなくなっているんですけど、その良さは今も昔も変わりません。
畳の文化を忘れてほしくなくて、畳にまつわる商品の小売を5年前に始めたんです。ここに来れば畳のことはなんでも分かる。そんな店にしていきたいと思っています」(佐古田さん)
店先には、イグサを使ったサンダルや玄関マット、畳縁を使ったハンドバッグや小物などが並んでいる。
佐古田さんの義弟・福島隆一さんは、街並みの変化についてこう語る。
「子供の頃にお年寄りから聞いた話だけど、ここらへんの旧東海道はもっと海に近かったらしい。店の裏に回って数十メートルほど行くと”元なぎさ通り”という道にたどり着くんです。昔はそこまで海だった。お祭りのときには、神輿を担いだまま海に入るという神事もあったらしい」(福島さん)
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