「かっこいいけどイケイケじゃない」 実写映画『秒速5センチメートル』に《松村北斗が必須だった》ワケ 批判されがちな実写化、なぜ成功した?

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さらに、実写版は09年の時代の描写にもかなり気配りがされている。

まだガラケーの時代のメールや、auが「au Design project」として出していたオシャレなデザインのケータイ、10年にはなくなってしまった新宿のさくらやなどもしっかりと映し出す。

新海が作品を観て、「失われた2000年代に泣いているのか自分でもよく分からない」とも語っていたほど、09年という時代をしっかりと描くことが重要な要素になっていた。

そうなると、貴樹を演じるにあたっては、09年の空気感を実際に体感しているかという部分も左右してくることだろう。

秒速5センチメートル
松村は「2009年」の時代感をまとい、見事に演じきった(写真:Instagram『秒速5センチメートル』映画公式アカウントより)

松村北斗自身の人生とも重なる

09年といえば、松村が3度目の応募でオーディションに呼ばれ、事務所に入所し、「B.I.Shadow」というグループのメンバーに選ばれてCDを出した激動の1年である。

13歳でありながら、社会に出た年といってもいい。さらに松村の場合は、静岡から東京に通うというハードルものしかかる。13歳にとっては、映画と同様に豪徳寺から岩舟に行くくらいの大冒険である。

そこから「SixTONES」としてデビューするまでの11年について書くと長くなるので割愛するが、きっと貴樹のように、東京の中心にいながらも、どこか所在なさげで、「自分はどこにいくのか」を繊細に考え続けていたことだろう。

『秒速5センチメートル』は、実は松村北斗の初の単独主演映画である。そこで松村が丁寧に積み上げてきた人生と、その“アイドルらしからぬ”特性がピタリとハマり、大ヒットしたうえに評価も高いという素晴らしい状況を生み出したのである。

※1 東宝MOVIEチャンネル「松村北斗 × 奥山由之 × 新海誠 スペシャルトークセッション」
※2 『TV LIFE』2025年10月17日号
※3 フジテレビ「ぽかぽか」2025年10月10日放送
※4 『Myojo』2020年5月号
※5 『anan』2025年10月15日号
霜田 明寛 ライター/「チェリー」編集長

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しもだ あきひろ / Akihiro Shimoda

1985年・東京都生まれ。早稲田大学商学部在学中に執筆活動をはじめ、2009年発売の『テレビ局就活の極意 パンチラ見せれば通るわよっ!?』を皮切りに、3冊の就活・キャリア関連の本を執筆。企業講演・大学での就活生向けセミナー等にも多く登壇し、自身の運営する就活セミナーからも累計100名以上のアナウンサーを輩出している。また、編集長を務める『文化系WEBマガジン・チェリー』や雑誌などで記事を執筆。映画監督や俳優を多く取材し、トークイベントの司会なども担当する。自身の観点でドラマ・映画等を紹介するVoicy『シモダフルデイズ』は累計200万回再生を越える人気コンテンツに。ジャニーズタレントの仕事術をまとめた4作目の著書『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)は3万部を突破している。
Xアカウント:@akismd

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