「かっこいいけどイケイケじゃない」 実写映画『秒速5センチメートル』に《松村北斗が必須だった》ワケ 批判されがちな実写化、なぜ成功した?
新海作品の男性主人公は、基本的には、うじうじと思い悩む、繊細な精神の持ち主である。しかし、それでありながら、男性から積極的にアプローチしなくても、女性のほうから想いを寄せて、近づいてきてくれる。そこに説得力を持たせなければならない。
簡単に言えば、「かっこいいけど、イケイケな雰囲気であってはいけない」のである。
松村は、端正なルックスであるにもかかわらず、そこに調子に乗っている感じが皆無の、珍しいタイプのイケメンである。

「SixTONES」という人気グループに所属するアイドルなので、ファンサ―ビスとしてもちろん手を振るなどもするが「割とコンサートでもお辞儀する」し、しかも相手を見て、手を振るなどのファンサをするのか、お辞儀をするのといったことを、瞬時に判断しているという丁寧さだ。(※3)
さらに、10代の頃からジュニアとして輝かしくアイドル活動を始めながらも「自分は特別な人間じゃないことに気づいてた」(※4)と、その明るすぎるスポットライトに簡単にはのみ込まれなかった。
また自分で「俺、根は明るいんですよ。おしゃべりだし。でも人見知りっていう、めんどくさい感じ」(※4)と語るその“めんどくさい”精神性は、新海作品の主人公にピッタリである。逆に言えば、“アイドルらしからぬ”部分と言ってもいいかもしれない。
「2009年」を実際に体感しているか
アニメ版『秒速5センチメートル』では、主人公が自問自答するような語り掛けのモノローグが描かれている。
実写版でもそのモノローグは一部引き継がれており、そこへのハマり方が作品の成否を左右すると言っても過言ではない。
松村は、22年公開の新海監督の映画『すずめの戸締まり』で、男性の主要登場人物の声を担当し、その声は既に新海のお墨付きだ。
さらに松村は、実写版の30歳を迎える直前の主人公・貴樹と撮影時に同い年。奥山由之監督に「常に自分と対話している」(※5)と評され、自身の現在の状況を「僕はまさに貴樹のモノローグの真っ只中」(※1)と語る松村によるモノローグは、まさにピッタリ。
新海が本物の松村を観て「映画の続きを観てるみたい」(※1)と語るほどだった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら