「かっこいいけどイケイケじゃない」 実写映画『秒速5センチメートル』に《松村北斗が必須だった》ワケ 批判されがちな実写化、なぜ成功した?
以下は大いなるネタバレになってしまうが、結果的に実写版はアニメ版と変わらず、男女が出会えずに終わる話だった。観客に「会えそう」と思わせる仕組みは多々あり、それがメジャー映画っぽい規模感を演出しているものの、物語の核となる部分は変えずに、2人は出会えずに終わる。
だからこそ、アニメ版の主題歌だった山崎まさよしの『One more time, One more chance』の「いつでも捜しているよ どっかに君の姿を」というフレーズが実写版で流れても、アニメ版と変わらずピッタリとハマる。
実写版の主題歌となった米津玄師の『1991』の「君の声が聞こえたような気がして 僕は振り向いた」という歌詞も、山崎まさよしのこの曲を受けたかのような、実写版のラストシーンにピッタリとハマる名フレーズだ。
双方とも、思いを寄せる人に会えていないことが前提となっている歌詞なのだ。

実写版は、大げさに言えば、アニメ版『秒速5センチメートル』を作った30歳ちょっとの新海誠が、その精神性のまま、今の時代に改めて新作を作ったかのようだった。
製作発表時には「いまの自分には決して作れないでしょうし、再現も出来ません」とコメントしていた新海が、出来上がった作品を観て「当時のその不器用な種が、青さも含んだままに見事な結実となっていました」と語るすばらしい実写化だった。
実写化を成功に導いた「松村北斗」という存在
では、その種を結実させるうえで重要だったのは何だったのだろうか。
もちろん多くの要素が絡み合ってはいると思うが、その中でもかなり重要な役割を果たしたのが、主演の松村北斗ではないだろうか。
新海誠の精神を実写で体現するという、今まで誰も成したことのない大仕事を見事に成し遂げたのである。新海も「貴樹がほっくん(松村)で本当によかった」と松村本人に語りかけたという。(※2)
無料会員登録はこちら
ログインはこちら