「かっこいいけどイケイケじゃない」 実写映画『秒速5センチメートル』に《松村北斗が必須だった》ワケ 批判されがちな実写化、なぜ成功した?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

そもそも、『秒速5センチメートル』のような熱狂的ファンがいる作品のリメイクというのは企画として難しい。

思い出されるのは、17年に公開された『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』だ。

これは、1995年に公開された岩井俊二監督の実写映画のアニメ映画化で、アニメ版で新たに付け足された要素などを含めて原作ファンには大不評。

川村元気プロデューサーに脚本は大根仁というヒットメーカーが組んで大規模公開されたにもかかわらず、思ったよりも不発で、現在もFilmarksのレビューも2.6という、いわゆる黒歴史的な作品となっている。

実写→アニメなのか、アニメ→実写なのか、という順番こそ逆ではあるものの、世界観がしっかりと構築されているがゆえに熱狂的なファンを抱え、10年以上経ってもその監督の出世作であり、メジャー化する前の作家性を濃縮したものであるかのように語られるという意味では、両作品の原作には共通点がある。

もとは1時間程度の中編を約倍の長編の尺に延ばすという点、リメイク時の監督は他者に託している点、公開当時は単館系公開だった作品を東宝の大規模公開でリメイクするという点も共通している。

筆者としては『秒速~』実写化の報を聞いたときに『打ち上げ花火~』の二の舞にならないかどうか、強い懸念を抱いた。

秒速5センチメートル
原作ファンの期待と不安を背負って制作された(写真:X『秒速5センチメートル』映画公式アカウントより)

引き継がれた「新海誠の初期の精神」

出来上がった実写版『秒速5センチメートル』は、63分を121分に延ばし、主人公の男女2人が大人になってからのパートを実写オリジナルで創作して描いたものだった。

結論から言えば、それがとてもうまくいっていた。

その理由は、新海誠の初期の精神をきちんと引き継いだうえで実写にしているからではないだろうか。新海自身も「自分でも驚いたことに、泣きながら観ていました」と絶賛のコメントを寄せている。

次ページ初期の新海作品は、ボーイミーツガールの物語
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事