「東京の家賃高騰に悲鳴!」住宅手当を増額しても従業員はなお不満 ベテランと若年層のバランスにも苦慮

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バブル崩壊後、多くの日本企業が「持たざる経営」、つまり資産をできるだけ持たないという方針を打ち出しました。それを受けて人事部門は、社宅・独身寮を売却し、従業員の持ち家取得を奨励・支援してきました。⑤企業所有社宅・独身寮の導入は、この方針に反します。

「社宅・独身寮を復活してほしいという従業員の声がたくさん届いています。しかし、『持たざる経営』『持ち家取得推進』という長年続いた方針を転換するべきなのか、経営陣の間でも人事部門内でも、議論が割れています」(輸送機)

また、コロナ禍を受けて多くの日本企業がリモートワークを推進しました。しかし、2023年頃から原則出社に方針転換する企業が続出しました。③リモートワークの拡大は、現在の原則出社という方針に反します。

「コロコロ方針を変えてリモートワークを推進することに人事部門は反対です。ただ、従業員からの復活要望は根強いですし、経営陣からは『ゼロベースで働き方のあるべき姿を考えよ』という指示が来ています。今後は、家賃補助の増額でお茶を濁すことは許されません」(サービス)

転勤廃止の流れで社宅・独身寮は不要に

さらに、企業が社宅や独身寮を用意する大きな理由として、人事異動で従業員が全国各地に転勤するという仕組みがあります。近年NTTなど一部の大手企業が転勤廃止の方針を打ち出しており、実現すれば社宅・独身寮の必要性が低下します。

「共働きの社員が増えていることを受けて、転居を伴う転勤を廃止することを検討しています。ただ、実際にやるとなると、社宅・独身寮といった福利厚生だけでなく、採用・人事評価・教育など色々な人事関連制度に影響が及ぶことから、まだ決まっていません」(物流)

このように、多くの人事部門担当者は、足元の家賃高騰には①借り上げ社宅の家賃補助の増額や②住宅手当の増額で対応しつつ、より抜本的な人事制度改革でこの問題を解決しようと模索しているようです。

ところで、一連のヒアリングで最も印象に残ったのは、「家賃高騰への対応は、本質的には若年層対策です。いま人事担当者は若年層対策で疲弊しきっており、状況がさらに悪化しそうです」(専門商社)というコメントです。どういうことでしょうか。

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