自分でできることと人に甘えていいことのさじ加減。これはシニアに限らず耳が痛い人は多いのではないか。年老いた親がいる場合、家族もつい甘やかしてしまうことがある。
栗原さんの場合、娘の真紀さんがしっかりとコントロールしてくれている。
「娘は私を動かすさじ加減がうまいのよ。やればできることは自分でやりなさいよって、手を貸さない。店のことには口出ししないけど、掃除だけはうるさくて、常にきれいにしておかないと怒られちゃう。でも、窓ガラス拭きは黙ってやってくれるの。窓ガラスを拭くのは大変なのよ」

ケンカした娘に贈ったもの
小さなケンカはしょっちゅうで、軽く頼んだことを「自分でできるでしょ!」とぴしゃりと返されることもあるが、「これ好きそう」と化粧品や洋服、健康グッズを買ってきてくれる。料理上手の真紀さんが作る手が込んだ食事は毎日の楽しみだ。
かつて栗原さんが息子の妻とのすれ違いをこぼしたときは、「あなたの最愛の息子が選んだお嫁さんだから、そんなふうに言っちゃダメ」と一喝。愚痴につきあってくれなかったと、栗原さんは苦笑いする。

夫を9年前に亡くしてから、真紀さんとの気ままな2人の暮らしが始まった。時々、栗原さんは真紀さんに宛てて手紙を書く。
「ケンカした夜は、ベッドに入っても『言いすぎちゃったな』と考え始めると眠れなくなって、夜中にごめんねって手紙を書くの。日頃の感謝は書き出すととまらなくなって、下手な字でつらつらと何枚も書いちゃう」
手紙だと意地も照れもなく、娘への素直な気持ちを伝えられる。「あなた、手紙はうまいわね」という真紀さんに、すかさず「そうでしょ」と胸を張る栗原さんだ。
家族といえども難しいのが親子の関係。老親との同居となるとなおさらだ。しかし2人を見ていると、その関係性に何かヒントが隠れているような気がしてきた。

前編の記事はこちら→→【「43歳で喫茶店を開業」「乳がんで手術も1週間で復帰」 90歳の喫茶店店主が《がん罹患後も週7で店に立つ》ワケ】
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