このように“健康優良シニア“の栗原さんだが、気をつけているのは室内転倒だ。実は80歳を過ぎた頃、自宅2階の階段を踏み外し、上から下まで転げ落ちてしまった。
ものすごい勢いで下まで落ちたとき、栗原さんはとっさに頭の中で自分の名前をそらんじた。あー、ちゃんと言えるから大丈夫だと思ったという。
念のため整形外科に行くと、指の骨にちょっとひびが入っていたが、あとは無傷だった。そして医師は感心したように、栗原さんにこうたずねた。
「ずいぶん体がしっかりしていますね。柔道でもやっていらしたんですか?」
栗原さん、大事に至らず何より。ちなみに柔道経験は皆無だそうだ。

億劫に負けたら老いていく
その若さと健康を支える要素は生まれ持ったものもありそうだが、一番は栗原さん自身の強い意志だろう。
「自分のことは自分でやる。これは絶対。口で言うのは簡単だけど、自分に厳しくしないとなかなかできないわよ。年寄りはね、周りの人にやさしくされるとすぐ甘えてしまうから。やってもらったほうが楽だしね。でもそうしたら体力も落ちて、体はみるみる使えなくなっていきます」
栗原さんはきっぱりと言い切る。
日常生活の些細なこと、たとえば荷物を持ってもらう。戸棚のものを取ってもらう、部屋の掃除をしてもらう、洗濯ものをたたんでもらう、広げたものを片づけてもらう……。
やれば自分でできることを人にやってもらい楽をしていたら、どんどんできることがなくなってくる。なんでもなかったことが、億劫になってくる。「億劫に負けたら気持ちから老いていくよ」と栗原さんは言う。

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