所有者の意識がバラバラであるマンションは、建て替え議決すら通らない可能性がある。工事費の高騰という問題はあるものの、住民の和が形成され、建て替えが決まっているヴィンテージマンションはソフトの部分でも良い要素が非常に多い。「買い」と見る人が多いのはそのためだ。
では、建て替え議決に至っていないヴィンテージマンションはどうか。積極的に購入している人もいるが、そうした人の多くは不動産取引のプロ。先物取引と同じで、的確なジャッジをしないと痛い目にあう可能性があることは覚悟しておきたい。
中古マンション選びは骨董品の目利きと同じ
いわゆるヴィンテージマンションには手が出ないという人は、たとえば、骨格のプロポーションが美しいマンションに目を向けてみてはどうだろう。特筆すべき個性こそ多くないが、シンプルでベーシック。それゆえに美しい。普遍的だからこそ価値があるニュートラルなマンションもまたヴィンテージマンションに匹敵するといえよう。
こうしたマンションを見極めるには、うわべの状況のみに目を奪われないことだ。躯体、骨格そのもののプロポーションの善しあしも肌感覚で味わいたい。家具や内装材だけに目を向けるのではなく、裸にしたときの美しさ、つまり空間の可変性をチェックしたい。
いちばん望ましいのは、天井が高く、間口も広く、柱が少なく、余計なものがない空間だ。このようなシンプルな箱型の空間であれば、プランや仕様についてはあとでいかようにも変更ができる。つまり多様性に対応できる可能性が高いということは、その分、買い手もつきやすくなる。
また、マンションの「変えられない部分」にも目を向けたい。天井の高さや窓から見える景色は誰にもコントロールのしようがない。抜けや見晴らしが良い、天井が高く窓から豊かな緑が見える、風の通りが良いといった要素は、普遍的なアドバンテージだ。さらにいえば、「床のコルクタイルの味わい深い色あせ方」というようなエイジング感(経年感)が気に入れば、あなたにとっての唯一無二のヴィンテージマンションになるかもしれない。
これは骨董屋での骨董品との出会いにも似ている。風情のある庭をそのまま活かしたい、そのマンションに刻まれた記憶や歴史を受け継ぎたい。そうした印象は、そのマンションに住む確固たる理由になる。自分の感性に響く要素を備え、ワインのように熟成することで魅力を増していく可能性のあるマンションとの出会いは貴重である。
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