紀州鉄道はホテル・不動産業などを主たる事業としていて“箔つけ”のために鉄道を買収したもので、鉄道事業ではさして儲かっていないという。が、それでも御坊の町では紀勢本線の御坊駅と市中心部が離れているから、それらを結ぶ紀州鉄道の存在感はなかなかに大きいという。
かくのごとく、和歌山県内のJR線のほとんどは紀勢本線を語るだけで片付いてしまう。だが、もちろん県内にはほかにも鉄道路線が通っている。1つは「くろしお」や「紀州路快速」が走る阪和線、そして和歌山線だ。
阪和線はその名の通り大阪の天王寺駅と和歌山駅を結び、紀伊―和歌山間が和歌山県内。戦前、日本一速い「大阪―和歌山間ノンストップ45分」の電車を走らせた私鉄、阪和電気鉄道として開業した路線だ。
和歌山線は奈良県の王寺駅と和歌山駅を結んで走る。和歌山県内に入るのは大和二見―隅田間。以後、一貫して紀ノ川(奈良県内では吉野川)に沿って走る。ほぼ終日1時間に1本ペースという、平たく言えばローカル色の強い路線である。
難波と結ぶ南海の二枚看板
そんな和歌山線と途中の橋本駅で接続しているのが南海電気鉄道だ。1885年12月に大阪の難波と堺の間が開通。2025年で開業140年の現存する最古の私鉄だ。大阪側は難波をターミナルに、本線と高野線が二枚看板。どちらも大阪と和歌山両府県を結んでいる。
南海本線は難波―和歌山市駅間。途中、泉佐野駅では関西国際空港に向かう空港線を分けていて、実質的にはJR阪和線と競合関係になっている。
阪和線には特急「くろしお」が走り、南海本線には特急「サザン」。「くろしお」は乗るだけでも特急料金がかかるが、「サザン」は8両編成のうち4両の座席指定車以外は特別料金が不要の列車だ。

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