第1位は平均勤続年数25年の富士石油。平均年収は800万円と高水準だ。同社は精製した石油製品を昭和シェル、JX日鉱日石エネルギー等に供給している。千葉県にある袖ヶ浦製油所のコスト競争力が高いのが強みだ。原油販売価格低下による石油精製マージン縮小や在庫評価損で前期は赤字だったが、今期はコスト削減が奏功して黒字化の見込み。
第2位は群馬や埼玉を地盤とする中堅建設会社の佐田建設。平均年収は539万円と上場建設会社の平均と比べて低い水準だが勤続年数は長い。居心地の良い会社であることが想像できる。
一時期、ゴルフ場開発などに失敗し業績が悪化したが、2004年4月からの3カ年計画で不動産事業を分離して建設に集中することにした。その結果、経営再建を果たしたのだが、これまで採用を抑制してきたため人員が不足していて仕事量の増加に対応できない。また、平均年齢が46.7歳と高いこともあり、新卒・中途での社員採用に前向きだ。
河合楽器がヤマハを上回る
3位はピアノ販売で世界2位の河合楽器製作所。平均年収は555万円と高くないが、勤続年数は24年1カ月年と長い。本社のある浜松市には業界トップのヤマハも本社を構える。
ヤマハは平均年収が823万円と河合楽器よりも圧倒的に高いが、平均勤続年数は20年3カ月と河合楽器を下回る。企業規模、事業構成などに大きな違いがあるため単純比較はできないが、河合楽器は居心地がいいのかもしれない。
4位は平均勤続年数23年9カ月で神戸電鉄。阪神系の電鉄会社で神戸北部に路線を持つ。沿線の不動産開発や食品スーパーなども展開し、売り上げ規模は大きくないが経営は安定している。平均年収は499万円と500万円割れだが、平均勤続年数は23年9カ月と長い。
鉄道会社は平均勤続年数が長いケースが多く、20位以内に東武鉄道(14位)、名古屋鉄道(20位)がランクインしている。特に年収が高くはないが、有給休暇をきちんと取れることなどが勤続年数の長い理由。人命にかかわる業務であるがゆえに、会社は従業員を休ませなければならず、それが社員の定着率向上に貢献しているわけだ。
5位は紳士・婦人靴の製造、卸、小売りを展開するリーガルコーポレーション。1902年設立の老舗で、中高級品を取り扱っている。業種としては「その他製品」分類されるが、売り上げの約5割を小売りが占める。小売業の中でも靴販売会社は平均勤続年数が短いことが多いがリーガルコーポレーションは長い。
冒頭で平均勤続年数が長いということは居心地が良くてブラック企業とは対極にあることを示すと述べた。しかし、もちろん利点ばかりではない。年数が長いことはいいことばかりではないということも頭の中に入れておいていただきたい。居心地のいい環境で、固定的なメンバーで長く働くと職場環境がマンネリ化してしまうことがある。こうした企業は新事業への意欲に欠けていたり、人事制度も保守的であったりする場合がある。何かやってやろうという若手社員には物足りない会社かもしれない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら