ホンハイ・郭会長の“聖戦”、シャープ提携で「iTV」受注に全力、狙うはサムスン封じ
そんな中、08年に世界金融危機が起こり、液晶パネル産業は底なしの赤字に陥り、提携交渉はいったん自然消滅。今回の提携は昨年初めから話が再開したものだという。
シャープとの提携モデルも変わった。当初、ホンハイ傘下の奇美電子との共同事業が考えられた。群創科技と奇美電子、統宝光電を合併させた後、ホンハイ側が新しい技術で優位に立つことを、郭会長は望んでいたようだ。特に統宝光電が持つ低温ポリシリコン(LTPS)は節電効果が高く、解像度が高いことから、アイフォーン4以降の製品で戦略的優位に立つと考えた。
しかし、統合後の奇美電子がLTPSの歩留まりを上げることができず、郭会長のもくろみが外れた。アイフォーン4Sや、新アイパッドのパネル生産で、奇美電子は受注することができなかったのだ。このため郭会長は急きょ、深超光電で中古の生産ラインを使用し、わずか5カ月でLTPSラインを立ち上げ、さらに天億顕示科技と合弁で天億科技を設立したのである。
これに対してシャープは、すでに三重工場でアイフォーン向けパネルを生産していた。亀山第1工場ではアイフォーン向け生産を計画、亀山第2工場でも、アイパッド向けの生産を計画している。アイフォーンに必要なLTPS技術を持つだけでなく、新アイパッドに必要な広視野角IPSパネルの技術も持っている。さらに、IGZO(酸化物半導体)技術で業界をリードしている。
郭会長は、スピードに追いついていけない奇美電子を前面に出すことを断念し、ホンハイ本体でシャープとの提携を進めることにした。同じグループ傘下でありながら、奇美電子の段行建会長は、発表当日までホンハイによるシャープへの出資を、知らされていなかったという。