10円駄菓子《ヤッターめん》"ダサいい"シール80種を徹夜で手描きする71歳社長。かつての漫画少年の夢は駄菓子という舞台で花開く

✎ 1 ✎ 2
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

社長である父の進さんに見せると、「これでいこか」とすんなり決定。そこから、駄菓子のパッケージやフタ、おまけのシールなどのイラストが中野さんの仕事になった。

色紙
ものの5分で描いていただいたヤッターめんのキャラクター(筆者撮影)

多忙な中でイラストをパパッと描くと、どうしても、小学生の頃に夢中で描いていた漫画のキャラクターに似てしまう。それこそが、「ダサいい」ジャックの象徴的な存在になっていった。

また、自然な流れで、キャラクターの背景デザインやお菓子のネーミング、シールに入るキャッチコピーなども、中野さんの仕事になったという。

一体どうしてそんなことができたのか。

ジャックの駄菓子
バラエティ豊かなジャックの駄菓子。企画、ネーミング、イラスト、デザインはすべて中野さんによるもの(筆者撮影)

前編でも触れた通り、中野さんは関西大学で、マスコミュニケーションと心理学を学んでいた。広告研究会にも入部し、その活動の一環で、商品ポスターのデザインやキャッチコピーを考えていたそうだ。「タバコ民族研究会」に頼まれ、ゼミメンバーで煙草に関する本を一冊編集した経験もある。

そのときは挿絵を担当したそうで、「簡単だが漫画風、版画風など全部タッチを変え、飽きられないように工夫したんやで」と楽しげに語ってくれた。

聞けば聞くほど、イラストもキャッチコピーもデザインも、うってつけの仕事だったのだ。ここからは筆者の推測だが、先代の進さんが家業を継いだ中野さんをおもんぱかって、あえてそういった仕事を中野さんに任せ、やりがいを生み出していたのではないだろうか。

「無理やりやらされてきただけや」と、うれしそうに笑う中野さんを見ていると、そんな気がしてならない。

けむりばなし
「タバコ民族研究会」から依頼されて作成した煙草と民話の本「けむりばなし」に中野さんが描いた挿絵(筆者撮影)

駄菓子1種類につき70種以上の図柄を描く

中野さんはどのように企画、ネーミング、イラスト、デザインを組み立てていくのか。

スタートはまず、「こんなおまけをつけて、こんなキャラクターで、こんなお菓子をつくろう」という部分を、一気に考えるそうだ。そこがまとまると、ネーミングやキャッチコピーが浮かんでくる。あとは同時進行で、フタのイラストとデザイン、箱のイラストとデザインを作成するーー。ここまでに要する時間はたった2、3日。広告や漫画、文章が好きだったので、そんなに苦労は感じないというから驚く。

ただ唯一、キャラクターの背景デザインは苦手だそうだ。

次ページ「ただのおまけだからこそ飽きられないように」
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事