10円駄菓子《ヤッターめん》"ダサいい"シール80種を徹夜で手描きする71歳社長。かつての漫画少年の夢は駄菓子という舞台で花開く
社長である父の進さんに見せると、「これでいこか」とすんなり決定。そこから、駄菓子のパッケージやフタ、おまけのシールなどのイラストが中野さんの仕事になった。

多忙な中でイラストをパパッと描くと、どうしても、小学生の頃に夢中で描いていた漫画のキャラクターに似てしまう。それこそが、「ダサいい」ジャックの象徴的な存在になっていった。
また、自然な流れで、キャラクターの背景デザインやお菓子のネーミング、シールに入るキャッチコピーなども、中野さんの仕事になったという。
一体どうしてそんなことができたのか。

前編でも触れた通り、中野さんは関西大学で、マスコミュニケーションと心理学を学んでいた。広告研究会にも入部し、その活動の一環で、商品ポスターのデザインやキャッチコピーを考えていたそうだ。「タバコ民族研究会」に頼まれ、ゼミメンバーで煙草に関する本を一冊編集した経験もある。
そのときは挿絵を担当したそうで、「簡単だが漫画風、版画風など全部タッチを変え、飽きられないように工夫したんやで」と楽しげに語ってくれた。
聞けば聞くほど、イラストもキャッチコピーもデザインも、うってつけの仕事だったのだ。ここからは筆者の推測だが、先代の進さんが家業を継いだ中野さんをおもんぱかって、あえてそういった仕事を中野さんに任せ、やりがいを生み出していたのではないだろうか。
「無理やりやらされてきただけや」と、うれしそうに笑う中野さんを見ていると、そんな気がしてならない。

駄菓子1種類につき70種以上の図柄を描く
中野さんはどのように企画、ネーミング、イラスト、デザインを組み立てていくのか。
スタートはまず、「こんなおまけをつけて、こんなキャラクターで、こんなお菓子をつくろう」という部分を、一気に考えるそうだ。そこがまとまると、ネーミングやキャッチコピーが浮かんでくる。あとは同時進行で、フタのイラストとデザイン、箱のイラストとデザインを作成するーー。ここまでに要する時間はたった2、3日。広告や漫画、文章が好きだったので、そんなに苦労は感じないというから驚く。
ただ唯一、キャラクターの背景デザインは苦手だそうだ。
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