10円駄菓子《ヤッターめん》"ダサいい"シール80種を徹夜で手描きする71歳社長。かつての漫画少年の夢は駄菓子という舞台で花開く

✎ 1 ✎ 2
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

最も意識しているのは、子供が普段使っている言葉と、イラストのインパクトだ。例を上げれば、看板商品「ヤッター!めん」(以下、ヤッターめん)の名前の由来は、くじに当たった子供が、「ヤッター! 当たった!」というからヤッターめん。フタに描いたチャイナ服の謎のキャラクターは、子供の頃に読んでいた漫画の記憶にヒントを得たものだ。

ヤッターめん
ヤッターめん。手書きの文字や焦る表情に親しみが湧く(筆者撮影)

イラストは、以前はインクや墨を使って全部手描きしていた。20年ほど前から「しんどなって」色付けだけデジタル作業に。それでも輪郭は手描きしてPCに読み込んでいる。

「駄菓子屋さんに置く駄菓子なので、きれいすぎるデザインは似合わん。チープさとダサさを出すためには、手描きでちょうどいいねん」

その言葉の裏には、たしかなブランド戦略がある。「あえて」チープで、「あえて」ダサく、子供が手に取りたくなる面白さを追求した結果なのだ。個性を際立たせるために、時代に逆行するデザインを意図的に選んでいる。それは同時に、駄菓子という文化が持つ、どこか懐かしく、温かい世界観を壊さないための、緻密な計算でもある。

この中野さんの発想と画力は、どこで培われたのだろう。

ニャンとかしてケロ
ネコとカエルの容器に入ったミント菓子「ニャンとかしてケロ」(筆者撮影)

漫画家に憧れた少年時代と広告研究会

小学生の頃は、漫画少年だった。『鉄人28号』『おそ松くん』に夢中で、将来の夢は漫画家。Gペンを買って原稿を描いたこともあるが、漫画家入門の本に「毎晩徹夜」と書いてあるのを見て、「これは無理や」と諦めた。

家族写真
幼少期、家族5人で出かけた貴重な思い出の一枚。右が中野さん。『鉄人28号』が大好きな少年だった(写真:ジャック製菓)

さらに小6のとき、父に漫画を禁止されてしまう。兄弟三人でそれぞれが『少年マガジン』『少年サンデー』『少年キング』を買って回し読みしていたら、家中漫画だらけになってしまったからだ。

小学校卒業後は、漫画を買いも読みもしなくなり、そこから漫画と距離をとることになった。

ところがジャックに入社後すぐ、封印した漫画に近い仕事をすることに。外注していたある駄菓子のキャラクターイラストが「いま一つやな」と感じたのだ。けれど、描き直しには金も時間もかかってしまう。そこで、「もう俺が描くわ」と、自分から言い出したそうだ。

次ページ広告研究会での経験
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事