10円駄菓子《ヤッターめん》「取引先夜逃げで未払い1500万」「粗利数円」でも倒産せずに借金ゼロを貫く大阪町工場の "逆説の経営哲学"

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しかも、フタの裏には「駄菓子と換えられる」金券くじつき! 50円、100円など、「当たりが出るかもしれない」ワクワク感もお気に入りだった。

ヤッターめんのパッケージ
以前は完全密封で、フタに指をボスッと刺して開けるスタイルだったが、数年前から左上にめくり口がついた(筆者撮影)

年間約3500万個、利益は1個数円の現実

1982(昭和57)年からヤッターめんを発売するジャック製菓(以下、ジャック)は、東大阪市・永和の住宅街にある町工場だ。大きめの民家のような社屋は、元は農家だったそうで、木製のガラス窓や広い間口にその面影が感じられる。

ヤッターめんの製造工程はいたってシンプルだ。ラーメン店から仕入れる味付き麺を機械で砕き、型に充填してフタを圧着。裁断機でカットすれば完成する。

製造は毎日140個入りを1000箱、合計約14万個。年間約3500万個のヤッターめんが全国に送り出されている。しかし、その利益構造は厳しい。希望小売価格は15円で、実際の販売価格は10円~20円。原材料費は1個2円だが、包装や流通費を考えると、手元に残る利益は数円。利益率は20%を大きく下回る。

今年71歳を迎えた社長の中野幹さんは、「昔に比べると原材料費がどんどん上がって減らしようがない。もういっぱいいっぱいですわ」と薄く笑う。

卸売先も代替わりした頃と比べると半減したそうで、「順風満帆」といえる経営状況ではない。それでもなぜ、続けているのか。

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