「亀のスープの作り方とは?」、朝ドラ「ばけばけ」で注目・小泉八雲がアメリカ時代にまとめた唯一の料理本がユニークすぎた

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食文化という言葉もあるように、文化の重要な一分野である「食」の世界に真剣に取り組んだハーンの着眼点はさすがである。当時のニューオーリンズの食生活をこれだけまとまった形で残した功績は大きい。

カニを、ザリガニを、亀を、クレオール料理では当時どんな風に調理していたのか、我々はこの本で知ることができる。

「亀のスープの作り方」とは?

同書に掲載されている料理の紹介から一部を掲載します。

カニのフリカッセ

よく太ったカニ六杯を洗い、生きているうちにはさみと脚を切り落とす。そのまま丁寧に洗い、皿に並べる。

タマネギ二個をみじん切りにし、バター大さじ一(ラードとバターを合わせてもよい)で炒める。タマネギが茶色くしんなりしたら、同じく茶色くなるまで炒めておいた小麦粉大さじ一強を加える。

刻みパセリ適量と小さめのグリーンオニオン一個を放り込み、全体に火が通ったら熱湯を一クォート注ぎ入れる。これでベースとなるスープができた。

ここでカニを湯がかずにスープに入れ、とろ火で三〇分煮込む。ゆでた米を添えて食卓に出す。カニは湯がくと風味が消えてしまうので、カニにとりかかるときは最後の最後まで生かしておくこと。

(編集部注)一クォート=約0.95リットル

大人数向けの亀のスープ その一

亀は調理の前日に頭部を切り落とし、よく血を抜いておく。調理日には次の手順で全体を切り分ける。

まず、甲羅、腹部の殻、頭、脚から腸と赤身部分を切り分ける。胆囊を切らないように注意すること。赤身を熱湯で湯通しし、こびりついた殻をはずし、薄皮をはぐ。食べやすい大きさに切り、水にさらしておく。甲羅と腹部の殻は骨をとりはずしやすいように少量の水で煮る。

赤身肉が人数分に足りないようであれば仔牛の脚とハムを足し、一緒に焦げ目がつくまで煮込む。ここに熱湯および亀のゆで汁と骨を入れる。輪切りにしたレモン、粒こしょう、パセリ一束、薄切りのリーク二本を加え、塩で味をつける。

これを四時間ほど弱火で煮込み、濾す。甲羅、腹部の殻、頭、脚それぞれからとった肉(脚からも骨を取り除いておく)を加え、マデイラワインを半パイント、無塩バター一ポンド、小麦粉小さじ一を加える。薄切りのレモンも加える。二時間ことこと煮込んだら、食卓に出す。

亀を切るときは丹念に脂肪を取り除くこと。準備ができたら大皿に盛る。飾りにするのは亀の卵がよい。なければ鶏の固ゆで卵でよい。

(編集部注)一パイント=約0.47リットル、一ポンド=約454グラム

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河島 弘美 比較文学・英文学者、翻訳家

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かわしま・ひろみ / Hiromi Kawashima

東京大学大学院修士課程(比較文学・比較文化)修了。元東洋学園大学教授。

著書に『小泉八雲事典』(共著、恒文社) 、『世界の中のラフカディオ・ハーン』(共著、河出書房新社)、『ラフカディオ・ハーン』、『動物で読むアメリカ文学案内』、『翻訳に挑戦!名作の英語にふれる』(以上、岩波ジュニア新書)ほか。

訳書に『ラフカディオ・ハーン著作集』(共訳、恒文社) 、『小泉八雲名作選集』(共訳、講談社学術文庫)、『嵐が丘』、『ジェイン・エア』、『ワシントン・スクエア』(以上、岩波文庫)ほか。

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