自分の心を守る「バウンダリー」とは何か。他者に踏み込み過ぎない、踏み込ませ過ぎないためのテクニックを知る

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一方、人や社会からの影響を受けまいと頑丈すぎる境界線を引くことも不健全と言えます。他者や世界は、信念や価値観を押し付けてくる、自分に侵襲してくる敵のような存在とみなし、高い壁を作り、人と関わるのを避けます。人づきあいが希薄になり、他者と物事や時間を共有することが難しくなります。

状況によって臨機応変に強弱を変化させずに、常に堅固すぎるバウンダリーを引いてしまうと、結果的に「孤独」を感じるようになったり、「孤立」してしまったりするかもしれません。

自分だけでなく相手の領域も尊重する

境界線は自分と他者の間に2本存在します。自分には大切にしたい領域があるように、相手にも大切にしたい領域があります。バウンダリーを意識した関わりとは、バウンダリーを越えて相手の領域に勝手に踏み込まない、また、自分の領域にも勝手に踏み込ませない。これが原則です。

この原則に従えば、人と関わる時は、「あなたの領域に入ってもいいですか?」と承諾を得ることから始めます。

相手が「YES」なら、自分の考えやアドバイスを伝えることができます。相手が「NO」なら、伝えることは差し控えます。YESかNOかは相手に選ぶ権利があります。相手の主張を無視して自分の考えやアドバイスを押し付けるのは、相手のバウンダリーを踏み越える行為です。

そして、自分にもまた、同じ権利があります。例えば人から何か言われた時に、自分には必要ないと思ったら、「それは聞きたくありません」「受け取りたくありません」と主張する権利があります。主張しないと、自分の領域に侵入される可能性があります。厳しい言い方になりますが、自分の領域に侵入されたとしたら、それは「NO」と主張しない自分の責任でもあるということです。

例えば、やる気を見せない部下に対して、「上司の言うことを聞くのは当たり前なんだから、やりなさい」と強要するのは、バウンダリーを踏み越えた関わり方です。「じゃあ会社を辞めます」と部下が反応すれば、人間関係が決裂します。

バウンダリーを意識した関わりをするなら、部下の感情・考え・価値観を尊重しながら、自分の考えを伝えます。「私はこう考えるけれど、あなたはどう考えるか聞かせてもらえませんか?」。そのうえでどう対処するのかを一緒に考えていくのが、健全な人間関係と言えるでしょう。

上谷実礼 医学博士

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うえたに みれい / Mirei Uetani

千葉大学医学部医学科卒業。産業医・労働衛生コンサルタント(保健衛生)。公認心理師。千葉大学博士(医学)。千葉大学大学院非常勤講師。生活習慣・生き方と健康との関係に興味を持ち、社会医学系研究室で研究・教育に従事したのち、産業医として独立。のべ1万人以上の面談・カウンセリング実績。アドラー心理学・ゲシュタルト療法・ポリヴェーガル理論が専門。著書に『ミレイ先生のアドラー流“勇気づけ”保健指導』『ミレイ先生のアドラー流勇気づけメンタルヘルスサポート』(ともにメディカ出版)などがある。

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