「がんばりたくてもがんばれない」のメカニズム。そのとき、私たちの身体の中では何が起きているのか、自律神経との深い関わり

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ビジネスパーソンの方々と接してきて感じるのは、腹側(迷走神経複合体)の状態に戻る余裕がないほどに、交感神経を稼働させている状態がデフォルトになっていることが多いということです。産業医面談でも「ずっと仕事に追われている感じがする」という訴えをよく聞きます。さらに、怒りっぽい上司がいるなど、安全安心を感じられない職場で働いていると、交感神経が休まる暇がありません。

交感神経を使ってアクセルを踏み込むことで環境に対処できているうちはいいのですが、そのうちにエネルギーが枯渇してしまいます。すると、背側にモードが切り替わりやすくなり、ブレーキを掛ける反応が起こるのです。

がんばりたいのにがんばれない、というような葛藤が生まれることがあるのは、その人のやる気がなくてダメなのではなく、自律神経的、身体的にもアクセルとブレーキを同時に踏むような葛藤状態になっているから、と説明できます。

アクセルとブレーキを同時に踏み込むような状態になることによって、身体の内側ではたくさんの量のエネルギーを消費しています。その結果、何もしていないのになぜか疲れるとか、なんとなく調子が悪いとか、倦怠感を感じる、というような身体で感じる生きづらさが生まれるようになるのです。

デジタルデトックスで自分にやさしく

交感神経を休ませ、腹側迷走神経複合体を活性化させるための習慣のひとつとしておすすめしたいのがデジタルデトックスです。

スマホやSNSなどを通して膨大な情報に接し続けていると、交感神経が疲れやすくなります。デジタル環境から離れることで、情報をシャットアウトし、交感神経を休ませる時間をつくります。

私の場合、犬の散歩にはスマホを持って行かないようにしています。自分でもスマホ依存の傾向を自覚しているので、15分ほどの犬の散歩の時間は、私にとって貴重なデジタルデトックスの時間になっています。

それ以外にも、たとえば深呼吸は、心拍数を落ち着けて、腹側迷走神経複合体を活性化する効果があります。現代人は普段、胸の上部だけを使った浅い呼吸(胸式呼吸)をしがちですが、横隔膜を下に押し下げることで肺により多くの酸素を送り込める腹式呼吸がおすすめです。

思考がグルグルして、なかなか眠れない夜にも腹式呼吸は効果的です。なんとか考えないようにしようとするとかえって目が冴える、ということはよくあるものです。呼吸に意識を向けていくと、自然な眠りに入りやすくなります。

上谷実礼 医学博士

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うえたに みれい / Mirei Uetani

千葉大学医学部医学科卒業。産業医・労働衛生コンサルタント(保健衛生)。公認心理師。千葉大学博士(医学)。千葉大学大学院非常勤講師。生活習慣・生き方と健康との関係に興味を持ち、社会医学系研究室で研究・教育に従事したのち、産業医として独立。のべ1万人以上の面談・カウンセリング実績。アドラー心理学・ゲシュタルト療法・ポリヴェーガル理論が専門。著書に『ミレイ先生のアドラー流“勇気づけ”保健指導』『ミレイ先生のアドラー流勇気づけメンタルヘルスサポート』(ともにメディカ出版)などがある。

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