辺野古基地を完成させるのは、まず不可能だ 翁長知事は戦えば戦うほど強くなる

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また、久辺3区(辺野古現地)への国費の直接援助も逆効果になっている。現地住民の歓心を買おうとして行っているものだが、沖縄からみれば分断策としか捉えられない。これは原発再稼動における失敗と同じである。所在市町村に金をばらまけば局地的な賛成を買うことはできるかもしれないが、周辺はむしろ反発するだけだ。

中央政府が強硬になればなるほど、沖縄県知事の政治力をパワーアップさせる。実際に翁長知事への支持は知事選当時よりも高まっている。直接数字の比較はできないが、知事選得票率は50%だったが、4月の世論調査での支持率は約70%を超え基地反対では80%支持に及んでいる。そしてその後も支持に陰りはない。これは現政権の強硬態度が、抵抗の姿勢を崩さない翁長知事をパワーアップさせた結果である。

今後、翁長知事は一切の妥協をせずNOと言い続け、戦う姿勢を示すだけでよい。工事の工程を一つ進めれば、沖縄の反発は一つ強まり、知事の力も一つ増加する。

これは日華事変での蒋介石と似ているように思える。たとえ実際の戦闘で負けようとも、抗日戦を続ける姿勢を示すだけで蒋介石はパワーアップしていった。ある意味で、日本政府は日華事変と同様の泥沼に足を踏み入れているのである。

政府の法的勝利がトリガーとなる?

工事はいずれ政治的限界に達して停止するだろう。その時期はいつとはいえないが、工事の進展に合わせて反対運動の勢いは強くなるだろう。たとえば、仕切堤準備のための矢板打ち込みや、土運搬船による海面への埋立土投入といった見た目にも目立つ工程に入るときが反対運動激化の契機となりえる。

ただ、建設工事が崩壊する可能性が一番高いのは、皮肉なことに、政府が法的に完全勝利した時だろう。今後の各種法的判断で沖縄が完全に敗北し、法律的に抵抗できなくなれば、知事は政治的な決断をするはずだ。

「直接行動しかない」と知事が判断すれば、その判断を多くの県民も支持するだろう。県知事、市町村長、県選出の国会議員など地元実力者達が先頭に立ったデモが出現した場合、まず現地の警察は止められない。

デモ隊は工事地区に入り込み、その場を占拠する可能性がある。占拠を阻止しようと強引な警備を行ったとしても、今度は肝心の米国政府が手を引くだろう。反基地の運動が普天間-辺野古にとどまらず、在沖米軍、特に嘉手納へ飛び火することを怖れるためだ。

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