辺野古基地を完成させるのは、まず不可能だ 翁長知事は戦えば戦うほど強くなる
米国にすれば、圧倒的に重要なのは嘉手納の空軍基地である。嘉手納基地からの米空軍機の運用は、東シナ海・南シナ海海域での中国空軍力とのバランシングに大きな影響を与える。逆に普天間-辺野古の在沖海兵隊の価値は相対的に低い。
実際、普天間の在沖海兵隊が活躍する局面はないだろう。1950~60年代のような中国周辺島嶼への上陸戦は考えられないうえ、日本軍国主義の「ビンのフタ」としての役割も約20年前に否定されている。台湾有事についても、当の台湾の政権が海兵隊に期待していない。台湾にとっての現状維持は、海兵隊が担保するものではなく、米中関係の安定化によってなされるものと考えられている。
この意味で日本政府の法的勝利は目先の勝利によって全体の敗北を引き起こすものになりかねない。まず、追い込めば追い込むほど、沖縄の直接行動を引き起こすことを問題視しなければならない。沖縄県民との関係がこじれれば、米政府は海兵隊を沖縄から撤退させることを厭わないだろう。
翁長知事は直接行動を否定しない
政府は、翁長知事が自重することを望んでいるだろうが、それは期待薄だ。もし翁長知事が辺野古工事を認めてしまえば、沖縄への裏切り者となってしまう。そこで政治力も名誉も失われる。そして死ぬまで断罪されるだろうし、あるいは死後も批判される。
特に名誉の問題は大きい。功を遂げた政治家は歴史の評価を気にする。翁長知事は政治家生活が30年に及び、年齢も65歳と死後の名を惜しむ時期にある。ここで最後まで抵抗を続け、沖縄のために死ねばその名声は死後も残る。
翁長知事は当選直後に「裏切るなら死ぬ」と述べている。
「ボクは裏切る前に自分が死にますよ。それくらいの気持ちを言わないとね沖縄の政治はできないですよ。ね。俺はそのくらいの決意でやらないといかんですよ。うん。これをね、今、予測不可能ななかでね、こんな言い方をされるとね。私がどういってそんな言葉で言えるかったらね。その時は死んでみせますというね、そのくらいの決意でしかない、いえないですね」(翁長雄志「荻上チキSession-22」TBSラジオ、2014.11.17、筆者聞き取り)
翁長知事は普天間-辺野古への反対運動では妥協しないし、できない。県民の付託を受けた知事として、法的に行き詰まろうとも、公言したとおりノーと言い続け、その主張を貫いて死んでみせるしかない。そこに直接行動を排除する理由などないのだ。
逆に県知事として県民のために戦い続ければ、地方長官の鑑といわれた戦中の島田叡知事のように、死後も名誉に包まれる。それを望まない政治家がいるだろうか。
もはや中央政府は、翁長知事に対して、力づくで屈服を強いることはできないのである。
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