《ミドルのための実践的戦略思考》W・チャン・キム、レネ・モボルニュの『ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する』で読み解く 工具メーカーのマーケティング担当・清水の悩み

次に第4原則を踏まえて、適性価格やコスト構造を考える必要があります。第4原則では、価格を考える際に押さえるべきいくつかのポイントを示しています。その中でも重要な点が、「規模の経済」が効くのか、ということ。そして、もし規模が効くのであれば、先行者のメリットを享受するために、価格は最初から意図的に低く設定すべき、ということを示しています。

では、このビジネスにおける「規模」とは何か。それを理解するためには、このビジネスの「固定費」を十分押さえる必要があります。そして、よく考えてみると、このビジネスは従来のモデルに比較して、かなり固定費型のビジネスになることが分かります。具体的には、まずは顧客にリースするための工具在庫を全てIT社側で抱えなくてはならないことです。更に、顧客がリースする工具を柔軟に変更することや、故障した際にタイムリーに交換を行うためにも、在庫はできるだけ多く抱える必要があるでしょう。これだけで大きく固定費型のビジネスになります。

また、在庫管理を確実に行うために、ITインフラへの投資は不可欠になります。当然ながら、代理店営業ではなく、直販体制になるため、高度にトレーニングされた人材が必要になることになるでしょう。これだけのことを考えれば、この新たな工具のビジネスモデルにおいては、固定費型ビジネスであり、規模の経済が効きやすいビジネスである、ということが理解できます。

したがい、顧客層を広げるための低価格設定が前提になるでしょう。当然、中小建設業まで顧客層を広げる価格設定を意識すべきです。もし一気に中小建設業まで入ることができれば、固定費を大きく吸収することができ、価格設定などで今後のオプションを広げることが可能になります。そこまで行ければ、これから固定費を積み増さなくてはならない後続の競合企業にとっては、非常に勝負が難しい状況になるでしょう。

さて、通常の戦略論であればここまでで考えるべきことは終わるのですが、ブルー・オーシャン戦略にはこの先があります。この先の第5、第6原則には、「組織をどう動かしていくのか」という問いがあります。ここでの現実的なハードルは、「現場の営業担当者が正しくソリューション提供が出来るようになるか」、ということでしょう。

まず考えなくてはならないのは、営業の際の接点が変わること。つまり、対面は購買担当者や代理店から、より位の高い財務担当役員や場合によっては経営企画担当役員などに変わる可能性があります。彼らに対してどのように価値訴求をできるのか。ここが一つの山になりそうです。そのためには、当然営業担当者のマインドセットやスキルセットを変えていく必要があります。ここは大きな難所になりますが、第6原則を踏まえて、このプラン作りから営業担当者を巻き込むことができれば、ブルー・オーシャンへの道はぐっと近づくことになるでしょう。

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