移民やビザ巡るトランプ大統領の「二枚舌」がアメリカ経済に大きな打撃を与えている
深刻な人手不足に直面
問題は対米投資にとどまらない。移民労働力に依存する米国企業は、深刻な人手不足に直面している。
トランプ氏は6月の時点で、農場やホテルなど特定業種で移民が働けるようになる「一時パス」の導入を示唆していた。その際、同氏は臆面もなく「私は両方の立場にある。史上最強の移民規制派であると同時に、史上最強の農業支持者でもある」と語った(ワシントン・ポストやニューヨーク・タイムズの報道によれば、トランプ・オーガニゼーションは過去にホテル、ゴルフ場、ワイナリーなど十数カ所の施設で不法移民を雇用していた)。
19日にトランプ氏が突如発表したH-1Bビザに対する新たな措置で、混乱はさらに拡大した。専門技術を持つ外国人向けの同制度を見直し、申請に10万ドル(約1480万円)の手数料を課すというものだ。H-1Bビザを取得した就労者はITやエンジニアリングをはじめ多くの業界で活躍しており、企業側には激震が走った。いつものようにトランプ政権は週末を費やし、釈明や修正に追われた。
大量送還やその他の規制は萎縮効果をもたらし、景気減速の一因となっている。米労働省の非農業部門雇用データを分析したピーターソン国際経済研究所は、2025年の建設業、ホテル、外食、在宅介護分野での雇用増加が横ばいにとどまっていると指摘した。それまで非正規移民に依存してきた業種の雇用は、民間部門全体と同じ歩調で増加していた。
同研究所はさらに、トランプ氏が掲げた「不法移民を取り締まれば米国人労働者の雇用が増える」との公約は、いまだ実現していないと結論づけた。移民の減少は、米国生まれの労働者の雇用を押し上げることにはつながっていない。