26年廃線?地元が困惑する「富山地鉄」の経営問題 広がる反発、鉄路を存続するために必要なのは何か

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仮に、立山線を部分廃止したら代替バスを走らせる必要がある。しかし、同社は運転手不足を理由に県内のバス路線を大幅に減便している。バス転換は可能なのか。本線滑川―新魚津間を廃線候補とするのは、あいの風とやま鉄道線が隣に走っているからだが、廃線後の事前相談をしているのだろうか。同社線との直通運転案は以前からあったが、事業費55億円と試算され2018年に検討は凍結された。関係者の調整は簡単な話ではない。

経営陣が、地域に鉄道線の経営状況を説明する前に「数億円の赤字を補填してくれ」「自治体負担がなければ、一部区間の廃止も検討せざるを得ない」と一方的に牽制するから、「経営努力が足りないのではないか」「住民への説明を待たずに決めるのはいかがなものか」と各方面で不信感を抱かれる。廃線候補区間に関する説明も、今年だけで二転三転している。協議するにはあまりにも準備不足である。

地域との「課題共有」が鉄道存続の鍵

今、必要なのは、富山地鉄が、鉄道線の経営情報を公開した上で、自身の考え方を示すことだろう。一部区間を単独で維持できないと主張するならば、各区間の利用者数、利用状況、輸送密度などの数字を関係者に示して説明しなければならない。そして、過去にどんな経営努力をしたのか、なぜ経営が維持できなくなったのか、どうすれば利用者を増やせる可能性はあるのか、方向性を示して課題を共有する必要がある。

公共交通機関を守るために地域で財政支援するのは不可欠である。ならば行政や首長、議員、そして有権者である住民に「理解」してもらわないといけない。自治体や住民との信頼関係を醸成するためにも、持続可能な計画を作成していくためにも、腹の探り合いをするだけでなく、今こそ丁寧な議論の積み重ねをしてほしいと思う。

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森口 誠之 鉄道ライター

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1972年奈良県生まれ。大阪市立大学大学院経営学研究科前期博士課程修了。主な著書に『鉃道未成線を歩く(国鉄編)』『同(私鉄編)』など。

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