26年廃線?地元が困惑する「富山地鉄」の経営問題 広がる反発、鉄路を存続するために必要なのは何か
同社の売上高に当たる営業収益は2019年3月期の単体で67.4億円。うち鉄道事業の営業収益は16.7億円だった。
ただ、コロナ禍により2020年度の鉄道線の乗車人員は472万人で前年度比21%減となる。会社の営業収益は2021年3月期で 44.4億円と同36%減で、営業損失は22.6億円。鉄道事業の営業損失は7.1億円だった。2021年3月期の有利子負債は前期比69%増の70億7545万円で、有利子負債比率は109%となった。富山地鉄は資金の一部をシンジケートローンで調達しており、財務制限条項がついていた。連結純資産を前年同期比75%以上に維持できなかった場合、借入金の全額返済を求められる可能性があった。
今回の廃線話の元をたどると、設備の老朽化と安全対策問題がある。2020年に脱線事故が起き、2023年には保線社員の死亡事故が発生し、社長が引責辞任した。厳しい経営の中、安全対策のための設備投資や人員確保が十分でなかったとの指摘もあった。
廃止提案の原因は安全対策費用の急増
そこで富山地鉄は、老朽化する設備の更新に取り組んだ。近年、鉄道事業の営業費は17~19億円で推移していたが、2024年3月期は約24億円に急増した。運輸安全マネジメント資料を見ると、鉄道線・軌道線の輸送安全に対する投資は2014年度2.7億円、2021年度1.9億円だったが、2024年度は5.6億円となっている。
そして鉄道事業の営業損失は2010年代で年0.9~2.7億円で推移していたが、2025年3月期は8.4億円に膨らんだ。国や自治体の補助金を加味しても、実質6.7億円の赤字になる。設備の維持管理、安全対策などの投資を長年抑制してきたが、2年前から急に増やしたことで、軌道事業など他部門の黒字で補うこともできず、自治体に財政支援を求めることになったのだ。
同社の鉄道事業は、長らく低迷していた。鉄道線の輸送密度は2008年度で1702人と20年前から半減。「富山県統計年鑑」を見ると、主力の本線の輸送人員は1970年度1803万人/年から、1990年度878万人/年、2010年度435万人/年と激減している。特に2010年度の本線上市―宇奈月温泉間の主要駅の乗降人員計は1975年度比で2割弱に落ち込んだ。マイカーの普及、少子化、国鉄・JR北陸本線(現、あいの風とやま鉄道)との競合、観光客の減少など厳しい環境にあった。
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