26年廃線?地元が困惑する「富山地鉄」の経営問題 広がる反発、鉄路を存続するために必要なのは何か
しかし、北陸新幹線開業後も、鉄道事業の営業損失は2016年3月期1.4億円、2018年3月期1.4億円と赤字が続き、根本的な改善はできていなかった。立山線の輸送密度は2005年度754人から2018年度920人と増加したが、それでも民間資本で維持管理できるレベルを大幅に下回っていた。
富山地鉄が、十数年前に沿線自治体へSOSを出して、将来について協議を始めていれば、軟着陸できたかもしれない。
富山県は公共交通機関の充実に理解のある土地柄である。富山市はコンパクトなまちづくりを展開し、富山環状線や富山ライトレールなどの事業を推進し、軌道線2.3kmは上下分離した。2024年度は富山地鉄の各事業に総額3.2億円の補助を出している。県も万葉線、あいの風とやま鉄道、城端線・氷見線などの実績も経験もある。県内に先例があるので、関係者に「公共交通を活かしたまちづくり」という理念を共有してもらうのは可能だったと思う。
だが、経営判断は遅れ、コロナ禍で行き詰まってしまった。
自治体の積極対応で延命の可能性もあるか
富山地鉄の今後はどうなるのか。滑川市長と魚津市長、黒部市長は少なくとも2026年度まで支援できるよう検討すると表明した。富山県知事も立山線を基本的に存続させる方向で最大限努力していきたいと述べ、延命の可能性は出てきた。ただ、自治体との検討会は昨年秋にスタートしたところで、沿線7市町村でも富山地鉄鉄道線への依存度は濃淡がある。首長や有権者の温度差もある。その場しのぎの税金投入では先が見えない。
鉄道事業再構築事業実施計画を実施して国から支援を受けるまで時間はかかる。みなし上下分離方式で国の補助制度を利用する場合の整備費が約600億円との試算がある。県と市町村がその半分を負担することになる。
富山地鉄は、一部区間の廃線を示唆する一方、その後の輸送体系をどうするのか考えを示していない。
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