中国人留学生が《日本の美術大学》を選ぶ背景。学生や予備校関係者に「リアル」を聞いてみた!見えてきた「中国人美大生」の新たな潮流とは?

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「学科で劣った子の受け皿」として人気な日本の美大だが、それも今や過去の話だとサエさんは語る。もともと日本のアニメや漫画は中国の若者にとって人気のコンテンツだったが、とくに近年はゲームカルチャーが加わり、ACGと呼ばれる日本のアニメ(A)・コミック(C)・ゲーム(G)に影響を受けた若者が急増している。

実際に日本に来たことがなくても、アニメやゲームを通じて日本に行きたいと思う若者は多いようだ。筆者自身も中国の若者とふれあう中で、彼らが日本のアニメで見た日本の学生たちの生活に憧れ、初音ミクなどのキャラクターデザインに熱中しているのを良く知っている。

さらに、中国の好景気を受けた裕福な世代が親になり、彼らの進路を後押ししている。

予備校費用は年間およそ100万円。さらに日本語学校で約80万円。生活費を含めれば1年間で400万円ほどかかる計算だ。いくら円安とはいえ、必然的に裕福な家庭の子女が多い。

留学生たちのリアル、“働きたくない” SNS世代の若者

インタビューに応じてくれたマリさんやサエさんが学生時代を過ごした10年以上前は、生活費と語学勉強をかねてアルバイトをするのが普通だったというが、最近は “働きたくない” 若者が増えていると教えてくれた。

アルバイトはせず、予備校と自宅を往復し、大学を卒業したら別の国にまた留学する “留学ジプシー” も珍しくないようだ。

さらに、日本人学生との交流が乏しく、SNSと留学生同士の狭いコミュニティに閉じこもる学生も多いため、「日本語で文章は書けるのに、日常会話ができない子が意外と多いんです。SNSを見ることが多く、展覧会で本物の作品を見たりアートイベントに参加したりといったリアルなインプットの機会が不足している」とサエさんは指摘する。

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