中国人留学生が《日本の美術大学》を選ぶ背景。学生や予備校関係者に「リアル」を聞いてみた!見えてきた「中国人美大生」の新たな潮流とは?
結果として、「学科に自信はないが絵の才能がある」中国人学生にとって、日本は挑戦しやすい進学先となっている。親世代にとっても、アメリカやヨーロッパほどお金がかからず、治安もいい、安心して背中を押せる留学先なのだ。
筆者は、日本と中国それぞれ大学で学んだが、両者の大きな違いに教授と学生の関係性が挙げられる。中国では強い上下関係の上にあり、制作の方向性も担当教授の影響が大きい。
一方で日本は、学生たちはのびのびと自由に制作に励む。好きなものをつくり、自分の個性を追求できる環境も中国の若者たちには魅力的に映るのかもしれない。
予備校はまるでスパイ? 徹底リサーチの実態
中国人留学生と接するなかで驚かされるのが、受験前からのリサーチ力の高さだ。試験の傾向や面接対策はもちろんのこと、教授の経歴もしっかり頭に入っている学生が多いのは日本人学生との大きな違いだ。
高田馬場の予備校で教務管理を担当する上海出身のサエさん(仮名)は、予備校の実情をこう話す。
「毎年多くの合格者が出ますから、前年の合格者から試験内容や先生の情報まであらゆることを聞き出します。予備校はスパイみたいだなと思うこともあります(笑)」
こうした徹底した準備の甲斐あって、サエさんの予備校では合格率90%超。学生たちもSNSを駆使して、日本に来る前から日本の学校や受験のことを熱心に調べているという。
人気の美大は多摩美術大学や武蔵野美術大学で、意外にも東京藝術大学は候補に挙がりにくい。「留学生が少なくハードルが高い」という理由からだという。学科でも実技でも頭一つ抜けている学生たちは、中国国内の美大を目指すのかもしれない。
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