「助けてください」涙の土下座で迫る人事部長――同情心を食い物にする「採用ノルマ」の狂気

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「何度も申し入れました。でも『辞めてもいいが、代わりを自分で見つけろ』と。だから、あなたに声をかけているのです」

岩崎は憤りを覚えた。

「カジュアル面談とは応募前の相互理解の場です。応募の意思もない段階で部下を紹介されたら断りづらくなるではありませんか」

「だからこうして、お願いしているのです。私はこのままではうつ病になってしまいます。従業員の心のケアに強い関心を持つあなたにこそ来てほしいのです。私が倒れてもいいのですか」

たしかに岩崎は、転職サイトに「職場のいじめ解消や従業員の心のケアに取り組みたい」と書いた。しかし今のやり取りは、自分の志を逆手に取られているように感じられた。

「私には妻子がいます。あなたが入社してくれれば自由になれるのです。学校の先生なら困っている人を見捨てませんよね。このとおりです」

そう言うや否や、部長は椅子から大きく立ち上がり、膝をついて床に額をこすりつけた。

「困ります。考えさせてください」

岩崎はその場を逃れるために、そう答えるしかなかった。部長が最後に言った「ありがとうございます」の意味を深く考えぬまま帰宅した。

しつこい電話勧誘に心を揺さぶられる

帰宅後も部長からの着信が鳴りやまず、岩崎は気の毒さと迷惑さの間で心を揺らした。

たしかに、転職サイトに「社員の心のケアに取り組みたい」「職場の環境を改善したい」と書いたのは事実だ。にもかかわらず、この勧誘を断り、彼を見捨てて逃げることは、自分がこれまで大切にしてきたこの志を、自分の手で嘘にしてしまうことになるのではないかと、強い葛藤を感じたのだ。

翌日、勤務中の岩崎にふたたび部長から電話があった。

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