揖保乃糸「パッケージ通りに湯がけば別格の味!」年間1億8000万食の圧倒的シェア、SNSで愛され続ける120年ブランドが"夏の王者"であり続ける訳

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こうして作られるそうめんは、小麦粉の質や麺の細さ、製造時期などでいくつかの等級に分類され、帯の色で見分けられる。主な等級は、上のランクから「三神(さんしん)・特級・縒(より)つむぎ・播州小麦・熟成麺・上級・太づくり」。いちばんメジャーなのが赤帯の「上級」で、全体の8割を占める。

各地との名物とコラボした“美味しい食べ方”

明治20年に発足した組合が、販路開拓に本格的に乗り出したのは大正8年。

西日本を巡るキャラバン隊で知名度を広げ、戦後は各地の名物と組み合わせた“美味しい食べ方の”レシピ提案を積極的に行った。沖縄でそうめんチャンプルーに揖保乃糸が使われるのは、その成果のひとつだという。さらに、大阪・神戸・姫路の上空から数万枚のチラシを散布するなど、斬新な販促にも挑戦した。

こうした柔軟なマーケティングと、創業当初からの徹底した品質検査。この2つの柱が、多業者製造でありながらも品質を安定させ、揖保乃糸を全国ブランドへと押し上げた原動力なのである。

取材を終え、家で試しにそうめんをゆでてみた。

「パッケージ裏面に書いている湯がき方がいちばん美味しい」と教えてくれた平田さんは、「湯がいてすぐ、冷水でキュッと引き締めたそうめんを、ぜひ食べてほしいんです。びっくりするくらい違うんで」とも前のめり気味にすすめてくれていた。

早速トライしてみる。いつもなんとなくやっているそうめんの湯がきを、パッケージに忠実にやるのはなかなか神経を使うものだ。

熱湯にそうめんをいれてすぐにタイマーをセット。時間がきたらすぐに流水でしっかりともみ洗い。最後に氷水に入れて冷やし、水気をしっかり切った。集中して調理するだけで、すでにごちそうである。

食卓に並ぶごく普通のそうめんに見えて、その1本1本には播州の風土と職人の誇りが宿っている。その事実を思い浮かべながら味わえば、揖保乃糸はきっと今まで以上に特別な一杯になるだろう。

そうめんの里の試食コーナーのそうめん
「そうめんの里の試食コーナーで食べました? 試食なのにあれ、べらぼうにうまいんですよ」と教えてくれたのは組合の天川さん。スタッフに声をかけると目の前で湯がかれ、冷水で締めるという本格的なもの。キンキンに冷えてそうめん観が変わるほどに抜群の美味しさだった(筆者撮影)
【画像を見る】本編で紹介しきれなかった画像も! ひんやり冷たくておいしそうな揖保乃糸のそうめんはこんな感じ。
編集部注:本記事に登場するメニュー、価格はすべて取材時点(2025年7月)のものです。昨今の原材料高騰などの影響を受けて価格が改定されている可能性があります。

→後編:「流通にほぼ乗らない」揖保乃糸の激レア"兄弟パスタ"。手延べ製法で生まれる「1年寝かせ麺」の実力と、リピーター続出を支える3軒の革新者

野内 菜々 フリーライター

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のうち なな / Nana Nouchi

兵庫県姫路市在住、大阪出身のフリーライター。京都府南山城村地域おこし協力隊、地域情報誌やWebサイトのライター活動を経て、「ローカル」「継ぐ」を取材テーマに、ヒト・モノ・コトをジャンルレスで企画、取材・インタビュー、執筆を行う。趣味は、家庭菜園、自然観察。1979年生まれ。
X:@nana_nouchi(https://x.com/nana_nouchi)

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