ピケティの「r>g」⇒「労働より投資が有利」を誤解している人に伝えたい、令和の時代は労働が大事な理由

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もちろん、バイトでスキルが身につくならいいが、まずは自分自身の労働価値を高めることを優先したほうがいい。投資はそのあとでも遅くないと思うのだ。

とはいえ日本では、どの会社に就職するかが非常に重要だ。就職時には学生時代の努力が報われるかもしれないが、いざ就職すると「がんばっても給料がなかなか上がらない」という閉塞感が長らく漂っていた。

しかし今、状況が変わりつつある。深刻な人手不足が、働き手の価値を急速に高め始めているのだ。

あなたをめぐる人材争奪戦

「初任給最大41万円、東京海上が大幅増」(朝日新聞、2025年1月11日付朝刊)

平成時代には考えられなかった変化が起きている。2023年頃から人材不足が目立ち始め、初任給が軒並み上がっているのだ。2022年に20万5000円だった三井住友銀行の初任給は、2026年には30万円に引き上がる予定で、東京海上に至っては、初任給が40万円を超えることもあると報道された。

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これは一部の会社だけではない。産労総合研究所の調査によると、2024年入社組の初任給を引き上げた企業は75.6%にものぼり、若手の人材獲得競争は激しさを増している。

住宅手当の増額、柔軟な働き方、特別手当、福利厚生の充実などにも力を入れる企業は多い。新卒だけでなく、既存社員への待遇改善も進み、人材の流出を防ぐ動きも目立つようになった。

この流れはオフィスワーカーに限らない。ネット通販の急増により、物流業界では時給アップや労働環境の改善が進んでいる。介護や看護などのケア分野でも、政府による処遇改善加算や企業独自の手当増加が拡充されている。

リクルートワークス研究所によれば、2040年には1100万人もの労働力が不足するという。現在の変化は序章にすぎず、今後さらに人材争奪戦は激化するだろう。

長らく日本をおおってきた「がんばっても報われない」という閉塞感は崩れ始めている。ギャンブル的な投資で一攫千金を狙うより、「働いて稼ぐ力」を着実に育てるほうが、人生を現実的に好転させられる時代が来ている。

田内 学 お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家

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たうち・まなぶ / Manabu Tauchi

お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家。2003年ゴールドマン・サックス証券入社。日本国債、円金利デリバティブなどの取引に従事。19年に退職後、執筆活動を始める。

著書に「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」総合グランプリとリベラルアーツ部門賞をダブル受賞した『きみのお金は誰のため』のほか、『お金のむこうに人がいる』、高校の社会科教科書『公共』(共著)などがある。

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