採用する側は、資格をどれだけ重視しているのだろうか。ニチレイビジネスパートナーズに話を聞いてみた。同社は、主にニチレイグループの給与計算や人事記録を行っており、事務職が中心。中途採用が基本で、これまで人材紹介会社を通じてスタッフを確保してきたが、今春初めてリカレントに求人を出し、48歳の女性をフルタイムの契約社員として採用した。
企画開発グループの渡辺龍氏は、「関連業務の経験に加え、簿記や社労士の資格を有し、PCスキルも高かった点」を評価したといい、資格についてはこう話す。「資格の有無では判断しないが、意欲や前向きに学ぼうとする姿勢のベンチマークになる」。また、「自腹で学ぼうと踏み出したことはスゴイ」と言い、リカレントへの入学自体も資格と同様に強い意欲の表れとして評価している。このほか、同様に重視したのは、「求める人物像であるか」(渡辺氏)。真面目に業務にコツコツ取り組む人材を求めており、マッチしたので採用を決めたそうだ。
実は今、このように本人の頑張りや人柄を重視する企業は同社だけではない。茂木氏も、「企業の規模にかかわらず、採用基準が年々人物本位になっている。努力や実力を重視する傾向にある」と感じている。しかも、女性活躍推進という時代の流れもあってか、最近リカレントでは、雇用形態は様々だが、フルタイムの採用が決まりやすくなってきているそうだ。
これから働き始めたい主婦には嬉しい話ばかりだが、茂木氏は「ブランクのある主婦が再就職するのは簡単なことではない」とくぎを刺す。
特に、人気の事務職を目指す場合は圧倒的な勉強量が必要だ。リカレントでは3~4つ資格をとって卒業する人はザラ。就職者の73.5%が事務職に就いているが、これは1年間トコトン勉強した成果なのである。
操作テクニックだけでは再就職できない
前述したIT系の勉強も決してラクではない。IT技術の変化は目まぐるしく、若かりし頃に情報処理系の資格を取得していても、今や通用しない場合が多い。社内の専用ソフトで仕事をしていたため、エクセルやパワーポイントにふれないまま今に至っている人も少なくないという。40代後半の女性の中には、ウィンドウズやマウスを使ったことがない人も。
こうした”浦島太郎状態“からの出発というだけでもツライが、リカレントは授業内容も濃いので受講生は皆ハードと感じるようだ。PC スキルを学べる講座の多くは操作テクニックが中心だが、実際は資料作成やプレゼンの力をセットで求める企業も多い。そのため、操作法にとどまらず、仕事で必要なスキルも教えるという。
著作権や情報漏えい問題といった情報倫理の知識を授けることを始め、「ロジカル思考を鍛えるため、わざと難しい課題を与える」(「ITリテラシー2」担当の藤田智子先生)。入社して難しい仕事を与えられてパニックになっては困るからだ。
たとえば、パワーポイントの操作を教えた後は、「信頼できるウェブサイトから何らかの元データを探し、それを分析してグラフなどを挿入したパワーポイント資料を作りプレゼンする」といった課題を出すそうだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら