「子どもが生まれるとメロメロになってくれました(笑)。私の姉には既に2人子どもがいたのですが、姉の嫁ぎ先から『我が家の内孫』と暗に示されるのが、私の母は悔しかったようです。そのため、『ついに内孫ができた』という喜びがあったのでしょう。
そんな両親の様子に、『この人たちにとっては事実婚かどうかよりも、山田姓の孫ができることが大切なんだな』と感じました。
だからといって『石川姓』にした次女に差をつけることはなく、可愛がってくれました。孫を分け隔てなく愛してくれたのは、妻の両親も同じだったと思います」
子どもの将来を守るため、婚姻届を出しては離婚
お二人は、3人の子どもを嫡出子(法律上の婚姻関係にある夫婦から生まれた子ども)にするため、妊娠が分かるたびに婚姻届を出し、そのあと離婚してきた。嫡出子にこだわった理由は、当時の相続の権利にあった。
山田さんは、「私たちが亡くなったあと、子どもたちの間で相続争いが起きないようにしておきたかった」という。
「2013年に民法改正で嫡出子・非嫡出子の相続分は平等になりましたが、それ以前は非嫡出子の相続分は嫡出子の半分だったんです。また当時は、非嫡出子に対して社会的な偏見や不利益が残っていました。そういう心配をなくしたいという思いもありました」
3人目の次女を授かったときだけは、「石川姓」で婚姻届を出した。山田さんは、「その間だけ、自分の名字が変わるという不思議な感覚を味わった」という。
「ちょうど実印が必要なことがあったのですが、役所から“名字が変わったので実印が無効になっています”と連絡がきて、印鑑登録をやり直さなければなりませんでした。“世の中の多くの女性は、結婚後にこういう思いをしているのか”と、そこで初めて実感しました」
子どもの名字は、「最初に生まれた男の子と女の子を山田姓にする」と事実婚をした当初から決めていたという。石川さんはどう感じていたのか。
「“もし3人目が生まれたら、石川姓にしてもらおう”と思っていました。私としては、山田姓と石川姓の両方の子どもがいることで、家族が完成するようなイメージを持っていました。
夫は山田姓と石川姓が2人ずつの4人兄弟にしたかったようですが、私の年齢的にも部屋の数的にも無理だと思ったので、諦めてもらいました(笑)」
こうして夫婦は制度の壁に向き合いながらも、生活を築いてきた。
後編では「33年間で22回」婚姻届と離婚届を出すに至った理由、そして別姓ファミリーの子どもたちが感じてきたことを紹介する。
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