ストーカーの中でも特殊なタイプ《神戸女性殺害事件》谷本将志容疑者(35)を異常行動に駆り立てた衝動とは?
通常であれば逮捕リスクを意識して、目立たない恰好をしたり、防犯カメラのない場所を犯行場所に選んだりするものだが、彼には「捕まる」という認識が希薄であった。おそらく、それは女性を追うこと以外に頭が回らないほどの異様な衝動性があったためと考えられる。
こうした異様なストーカー行為の背景にあるのは、彼のパーソナリティに関するさまざまな問題性である。まず、対人的な距離感が尋常ではない。
普通であれば、知らない相手から一方的に好意を告げられると、相手は拒絶したり戸惑ったりするものであるが、彼にはそれがわからない。さらに、被害者の立場や恐怖を想像する共感性が著しく欠如しており、「自分が相手を追いかけたいから追いかける」「それによって興奮を得られる」という自己中心的な論理で突き進むことしかできない。
犯罪心理学では、このようなパーソナリティは、「反社会的パーソナリティ・パターン」と呼ばれ、犯罪との関連がきわめて強いことが明らかになっている。今回の事件にも、そうした異常なパーソナリティや認知様式が影響していた可能性が強く推察できる。
刺激を求めて行為がエスカレート
一方、前回の事件の後、地元を離れて東京で仕事をしながら、一定期間は再犯を抑えていたとみられている。しかし、反省は長続きせず、孤立感の強まり、生活上のストレスや不適応感などをきっかけに、再びストーカー的な欲求が高まり、抑制が効かなくなっていったと推測できる。
また、この種のストーカー行為には「エスカレーション」が見られることが多いのも特徴である。最初は遠くからの観察に留まっていたものが、次第に接触を試み、最終的に身体的暴力に至るケースがある。
これは単に「相手との距離を縮めたい」というだけでなく、「以前の行為では得られなくなった興奮を、より強い刺激で得ようとする」犯罪者的な心理的メカニズムと関連している。
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