深夜の「置き配」もロボットが担当。ヤマト運輸が大規模マンションで仕掛ける物流のこれから

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対面での受け取りを希望した場合、ロボットは住戸のインターホンを押す。居住者は、事前にメールで通知された4桁のパスワードをロボットの液晶画面に入力すればロックが解除され、荷物を取り出せる。置き配の場合は、ロボットが玄関前に荷物を静かに設置。その場所を撮影した画像が完了通知とともにメールで送付される。

インターフォンを鳴らして待機するロボット
対面配達ではロボットがインターフォンを鳴らして待機する(筆者撮影)
ロボットによる置き配
置き配ではロボットが荷物を置いて帰還する(筆者撮影)

実用化へのロードマップと「ビジネスモデル」

ヤマト運輸は今回の実証を踏まえ、首都圏や関西圏にも対象地域を広げ、2026年中の実用化を目指すとしている。将来的には、現状では時間帯指定の対象外となる深夜・早朝の配送や、他社の宅配事業者の荷物を取り扱うことも検討する。さらに、韓国で既に導入されているゴルフバッグのような大型荷物を運べるロボットの活用も視野に入れる。

もちろん、実用化には「誰が費用を負担するのか」という現実的な問いがつきまとう。この点について久保田氏は、記者説明会で「今後の大きなテーマ」と述べるにとどめ、明言を避けた。つまり、ビジネスモデルはまだ白紙ということだ。候補としては、ヤマト運輸が商業施設で展開する館内物流サービスのように、他の宅配事業者から手数料を得る形や、付加価値として管理組合や居住者が費用を負担してもらう形が挙がっている。

エレベーターのパネルを操作するロボット
エレベーターのパネルを操作することも可能(筆者撮影)

今回の実証実験の対象となる新浦安のマンションでは、対象3棟(約300世帯)のうち、2割を超える居住者が利用に許諾している。成功のカギは、久保田氏が「一番はお客さまに受け入れていただけるか」と語るように、住民の満足度を高められるかにかかっている。

ヤマト運輸は今回の実証を、自社が持つ『館内物流』の仕組みを巨大マンション市場へ展開する足がかりと位置付けている。これは、物流の「2024年問題」に代表される担い手不足への戦略的な一手でもある。ロボットと人が自然に共生し、多様化するニーズに応えるこのモデルは、果たして居住者たちに温かく迎え入れられるだろうか。もしそうなれば、未来の都市型物流が大きく塗り替わる、その第一歩となるかもしれない。

石井 徹 モバイル・ITライター

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いしい とおる / Toru Ishii

1990年生まれ。神奈川県出身。専修大学法学部卒業。携帯電話専門媒体で記者としてのキャリアをスタート。フリーランス転身後、スマートフォン、AI、自動運転など最新テクノロジーの動向を幅広く取材している。Xアカウント:@ishiit_aroka

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