ホームや路上で女性にいきなり…「ぶつかり男」は罪に問えるのか?心理と対処法を専門家に聞く《5月には大学准教授が暴行容疑で逮捕》

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「“警察には捕まらない”と高をくくっていて、人混みで加害し、ヒット・エンド・ランで逃げてしまえばいいという見通しのもとで行っているので、人混みという物理的環境が用意されれば、何度も繰り返します」(桐生氏)

「犯罪は現代の社会を映し出す鏡」が持論の桐生氏。「未来に希望がないとか、世の中に閉塞感を感じるとか、『ぶつかり男』はそんな不満を立場が弱くなった男性のあがきとして噴出させている」と説明する。一方で「これを変えることは難しくはない」とも話す。

「女性よりも男性のほうが偉いという考え方を、女性も男性もフラットであるというふうに、『ぶつかり男』が変えればいい。すでに今の大学生を見れば、女性も男性もフラットだという価値観の学生は多い。ただ、いったん日本の大企業のような従来の企業風土を持つところに就職すると、昔ながらの考え方に変わってしまうのがネックですが……」

ぶつかり行為は罪に問えるのか?

そもそも、わざとぶつかる行為は罪に問えるのか。

ぶつかり行為についての記事を執筆したことがある坂野真一弁護士によると、前述した暴行容疑で逮捕された准教授のように、暴行罪(2年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金など)に該当する可能性があるという。

わざとぶつかられて負傷した場合は、傷害罪(15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)に該当する可能性がある。

民事でも、負傷したり持ち物が壊れたりした場合は、治療費や修理代について不法行為を根拠に損害賠償請求ができる可能性があるという。

一方、ぶつかられそうになった側が、ケガを避けるためにやむを得ず加害者を突き飛ばしてケガをさせたり、相手の持ち物が壊れたりした場合はどうかというと、その程度が過度でない限りは「正当防衛にあたる場合が多い」と考えられる。そのため、傷害罪に問われたり、損害賠償責任を負ったりする可能性は低いそうだ。

捕まった加害者が「わざと(故意)ではなかった」と主張することも想定されるが、不注意で負傷・死亡させたと判断された場合でも刑法上、処罰する規定はある。例えば、過失傷害罪は30万円以下の罰金、過失致死罪は50万円以下の罰金だ。

わざとかどうかは本人しかわからないため、証拠で証明するのは難しい。

しかし、「過去には酒に酔った男性がホームで電車を待っていた女性とぶつかり、女性を線路に転落させて死亡させた事件がある。この事件では重過失致死罪が適用され、執行猶予なしの実刑判決が下された。ですから、『わざと』であることが証明されなくても、証拠さえあれば重い刑事責任が問われる可能性はある」と坂野弁護士は話す。

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