ホームや路上で女性にいきなり…「ぶつかり男」は罪に問えるのか?心理と対処法を専門家に聞く《5月には大学准教授が暴行容疑で逮捕》
「ぶつかり男」の被害は、SNSやニュースでたびたび話題になっている。
今年5月には、“ぶつかりおじさん”こと、福岡市にある大学の男性准教授(59=当時)が、通行人に対する複数の暴行容疑で逮捕された(傷害容疑で書類送検済み)。複数の通行人にバッグをぶつけていたという。
別の事件だが、東京のJR田町駅や地下鉄の三田駅周辺でも昨年、被害が多発したことが報告されている。
ぶつかり男の心理を読み解く
「ぶつかり男」は、なぜわざとぶつかってくるのか。
犯罪心理学の観点から、加害者の心理について研究する東洋大学社会学部教授の桐生正幸氏は、「各事例について統計的に分析を行ったわけではないので、あくまでも予測ではあるが」と前置きしたうえで、「大きな理由の1つにミソジニー(女性蔑視)が関わっているのではないか」と、次のように考察する。
「『男性は女性よりも上』とか『家事や育児は女性が行うことが当たり前』といった昔ながらの考え方は、いまだに根強く存在している。でも、現代は厳しい雇用情勢や将来への不安などがあり、男らしさのモデルは失われて、男性の存在理由が危機に瀕している。
一方で、女性は社会進出が進み、活躍しているように見える。そんな鬱屈を抱えている男性が、女性のせいで自分は不幸になっていると思い込んでいるのではないか。ぶつかり行為は逆恨みによる攻撃行動ともいえる」
その鬱憤やストレスは、主に自分より力の弱そうな女性や高齢女性に向けられる。これは「あおり運転をする人が、高級車に乗った危なそうな人物は避けるのと同じ原理」(桐生氏)だという。
では、社会的に成功していると周りから見られているような人は、ぶつかり行為をしないか。桐生氏は「それに関する研究がいまだないので断定はできないが、感情や認識のとらえ方によると考えられるので、社会的な成功や裕福であるといった要因はあまり関係ないだろう」とも言う。
ぶつかり行為をしても、加害者がなかなか逮捕されないことも、桐生氏は行為が減らない要因の1つに挙げる。人混みに紛れて逃げてしまうため、加害者を特定するのが困難だからだ。
警察に相談したとしても、加害者が故意に行ったかどうかを判別するのも難しい。このため、泣き寝入りする被害者がほとんどだ。
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