その結果、プライオリティ・パスが海外への移動の際だけにとどまらず、国内移動でも使われるようになった。出発地でランチ、到着地で夕食、といった具合に1日に複数回、プライオリティ・パスが利用されるケースも少なくなかったという。
SNS上では「空港での食事や温泉が無料で楽しめる」といった情報が拡散され、利用が急速に拡大。プライオリティ・パスは1回の利用ごとにカード会社へ数十ドルが請求される仕組みであるため、カード会社は想定外のコスト増に直結した。
大手カード会社の社員は「当初のプライオリティ・パスの予算に対して数億円単位で費用が増加した」と明かす。

海外旅行では旅費やお土産代などでカードの決済額が大きくなりやすいが、帰省や出張といった国内利用では、プライオリティ・パスのサービスがそのままクレジットカードの利用につながるケースが少ない。そのため、「プライオリティ・パスの利用増加分はそのまま利益の悪化につながった」(同)という。
こうした状況はカード業界共通の悩みとなり、各社幹部の意見交換会でも対策が話題に上がるほどだった。そして、三菱UFJニコスは2024年10月1日から、JCBも同年10月31日から国内の飲食店やリフレッシュ施設での利用を対象外とした。楽天カードも同様の措置を取り、各社が相次いでサービス縮小に踏み切った。
ユーザーにとって最後の牙城だったクレディセゾン
そんな中、相対的に安い年会費のカードで唯一、最後までプライオリティ・パスで飲食店を利用できたのがクレディセゾンだった。関係者によれば、同社も昨年時点でサービス刷新を検討していたようだが、ついにコスト負担に耐えきれず、今回の決断に至ったもようだ。
同社では近年の拡大戦略において「セゾンゴールド・アメリカン・エキスプレス®・カード」などで年会費無料キャンペーンを展開し、無料でゴールドカードを保有する会員が急増。その結果、プライオリティ・パスの年会費1万1000円だけを支払い、カード利用がほとんどないという会員も少なくなかった。
ゴールドカードの年会費収入が得られず、カード利用も少ないため、プライオリティ・パスを数回利用されるだけで実質的に赤字に陥る構造になっていたわけだ。
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