【産業天気図・精密機器】事務機中心に07年度も好調。だが、コンパクトデジカメに若干の先行き不安も
07年度の精密業界は、06年度同様「晴れ」が続く見込みだ。特に前半は絶好調で「快晴」。
なかでも、カラー複合機やレーザープリンタなどの事務機は各社好調が続く。複写機のカラー化が進み、高収益のカラー複合機が収益に貢献するほか、レーザープリンタはカラー機に加え、モノクロ機も東欧、ロシア、中国など海外での需要に支えられて数量を伸ばす。これらがキヤノン<7751.東証>やリコー<7752.東証>、富士フイルムHD<4901.東証>の業績に安定的に寄与する。ただ、インクジェットプリンタは多機能化にもかかわらず、本体の価格下落に悩む状態が依然続いている。米IBMのデジタル印刷事業を買収したリコーをはじめ、富士ゼロックス、キヤノンなど各社が期待をかけるデジタル印刷機の利益貢献はまだ先。
デジカメも、前期コンパクト、一眼レフともに絶好調だった勢いが当面続くと見られる。特にデジタル一眼レフカメラは、低価格化によりユーザーの裾野が広がり、市場規模の拡大がしばらく続きそう。2強のキヤノン、ニコン<7731.東証>のほか、オリンパス<7733.東証>も今08年3月期、出荷台数を前07年3月期倍増の50万台と計画しており、シェア拡大に意欲を見せる。
一方、コンパクトデジカメの見通しには不透明な部分も。前06年度はユーザーの買い換え需要により業界の想定以上に売り上げが伸びたが、すでに市場は飽和気味。前半は06年度の勢いを受け堅調に推移すると見られるが、後半以降は市場が減退する可能性もある。
液晶関連の部品や携帯電話向け光学部品は、06年度に続き価格下落やメーカーの生産調整により軒並み停滞気味。ただし、前期液晶ディスプレーで赤字を出したセイコーエプソン<6724.東証>や携帯電話用の光学部品で赤字を出したシチズンHLD<7762.東証>は、リストラや一部事業の撤退によって赤字幅を縮小し、実質増益の効果を享受する。液晶の市況は07年度後半から徐々に回復する見込みだ。また、同じ光学部品の分野でも、HOYA<7741.東証>は半導体用マスクブランクスやHDD(ハードドライブ駆動装置)用ガラスディスク、携帯電話用非球面レンズなどで高シェアを維持し、高い収益性を確保する。
液晶・半導体関連は市況に左右される面がきわめて大きい。また、コンシューマー向けのデジカメ(特にコンパクトデジカメ)も市場の動向を予測することが難しく、在庫を抱えて採算を悪化させる危険性が少なくない。なお、前06年度各企業の業績を底上げした円安の効果は今07年度剥落する見通しだ。主要企業の今年度の対ドル想定為替レートは、キヤノンが117円、リコー115円(上期)、ニコン115円。為替動向次第によっては、利益にプラスに寄与する可能性はある。
【桑原幸作記者】
(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部
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