「公的年金があてにならない」って本当ですか?/分布推計が示す年金の構造的強さ

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こうしたこともあり、今年6月23日の第21回全世代型社会保障構築会議でも、政治家や社会保障担当の官僚たちに対し、「政治・政策に関わる皆さんには、この国の年金制度が持つ構造的な強さに、もう少し自信を持っていただきたい」と、自然に発言することになる。

あの日の会議では、次のように話している。

日本の年金に自信を持とう
こども未来戦略には、「将来に明るい希望を持てる社会をつくらない限り、少子化トレンドの反転はかなわない」とありまして、私はこの文言に深く共感をしています。そして、若い人たちの将来への希望を曇らせている一因というものに年金不安があると考えています。・・・政治、政策に関わる皆さんには、この国の年金制度が持つ構造的な強さにもう少し自信を持っていただきたいと思います。私は将来世代の年金が今よりも改善されるという見通しをみんなで共有して、それを信じて政策を進めることが若い人たちの希望にもつながり、ひいては『こども未来戦略』に記されているように少子化トレンドの反転にも資すると考えています。

残された課題とは何か

もちろん課題はある。

2018年頃から、勤労者には勤労者に相応しい被用者保険を保障することは「勤労者皆保険」と呼ばれていた。そして2022年12月にまとめられた全世代型社会保障構築会議の報告書は、「勤労者皆保険の実現に向けた取組」の工程として、 次の4つを挙げていた。

 短時間労働者への被用者保険の適用拡大(企業規模要件の撤廃など)
 常時5人以上を使用する個人事業所の非適用業種の解消
 週所定労働時間20時間未満の労働者、常時5人未満を使用する個人事業所への被用者保険の適用拡大
 フリーランス・ギグワーカーの社会保険の適用の在り方の整理

これらはいずれも基礎年金の底上げに資する施策でもある。構築会議の報告書には、勤労者皆保険に向けて「被用者保険の適用拡大を更に進めていくにあたっては、マイナンバー制度を含め、デジタル技術の積極的な活用を図る」とも記されていた。勤労者皆保険はまだ道半ばにあり、実現に向けた改革の加速が求められている。

権丈 善一 慶應義塾大学商学部教授

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けんじょう よしかず / Yoshikazu Kenjoh

1962年生まれ。2002年から現職。社会保障審議会、社会保障国民会議、社会保障制度改革国民会議委員、社会保障の教育推進に関する検討会座長などを歴任。著書に『再分配政策の政治経済学』シリーズ(1~7)、『ちょっと気になる社会保障 増補版』、『ちょっと気になる医療と介護 増補版』など。

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