経営のプロも「ビジネスになるか!」と一喝してたのに…なぜ「セルフうどん」は全国を制覇? 丸亀製麺・はなまるうどんの歴史から読み解く

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

のちにチェーン店に進化する「ちくせい」「さか枝」を先頭に、高松市内では早々に「セルフうどん」形態が一般化していた。

「ちくせい」かけ
「ちくせい」かけ。個人的な話で恐縮だが、筆者の実家から徒歩圏内で、昔から親しんできた(筆者撮影)

ただ、それ以前から存在していたのが「製麺所」だ。

今のようにコンビニ・ファミレスもなかった時代、企業・学校給食向けの卸売りのみであった製麺所(麺の工場)に「うどん作っとるんやったらここで食わせぇ!」と押しかける人々も多く、製麺所は「その辺で食うて帰れ!」とばかりに、玄関先に申し訳程度の「セルフうどん」コーナーを設けて……いる場合もあれば、そのへんの納屋が有名無実化で店舗に変化していた場合もある。

製麺所の場合は客側の独自ルールがさらに多く、「玉は菜箸でつかんで自分でとる」「丼も醤油も自分で持参」「ネギは前の畑から取って自分で切る」といった段階からセルフの場合も。当初からセルフ形態であった都市部の店舗、郊外に多い製麺所併設型が混ざり合いつつ、県内くまなく「セルフうどん」文化が広まっていった。

ネギ・ダシなど
「セルフうどん」は多くの店が、ネギ・ダシなどを自分でかける(筆者撮影)

「セルフうどん」のチェーン化が困難だった理由

のちに丸亀・はなまるが「セルフうどん」を足掛かりに全国制覇を果たすくらいなので、客側にも店舗側にもメリットがあるビジネスモデルだったのは、間違いない。ただ、この時点で「セルフうどん」は、ビジネス展開・チェーンストア化に致命的に向いていなかった。

要因はまず「既存のセルフうどん店・製麺所併設型店舗の競争力がありすぎる」こと。店舗の多くは個人経営であり、店舗は自宅併設、家族経営だと人件費も最低限で済み、県全体は水不足であるものの、小規模な井戸なら水脈がある場所も多く、その場合は水もタダ。

「必要なのは粉・塩・最低限の光熱費と体力だけ」状態であり、「かけうどん一杯数十円」でも、それなりに利益を獲れたのだ。極端な低コストを誇る個人店に、人を雇ってチェーン店化で対抗しようという経営者が現れなかったのは、至極当然といえるだろう。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事