自動車産業が米国で大きく発展した深い理由とは 経営者が意識しておくべき「与件」を読み解く

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モデルTとシルヴァーゴーストは、生産期間までほぼ重なっていますが、累積生産台数では2000倍の差がつきました。

皮肉なことに、小さいながら「富裕層の玩具」市場が成立した欧州では、そこに誰もが安住し、「富裕層の玩具」市場が成立しにくかった米国では、ヘンリー・フォードが苦慮の末に新しい事業立地を切り拓くことになったからです。

欧米間で与件が大きく異なっていた

その差は、控えめに表現しても絶大でした。

では、大衆車の事業立地に辿り着かなかった欧州勢のことを、努力不足や知恵不足と責めてもよいのでしょうか

答えは、ノーだと思います。

貴族が土地を所有する欧州では小作農が慢性的な貧困に喘いでおり、車を買うどころではなかったからです。

ヘンリーの真似をしようにも、農家を売り先とする選択肢など存在しませんでした。経済的に恵まれた独立農家が米国に存在したのも、ヘンリーが何かしたからではありません

すべては与件でした。そして与件が欧米間で大きく異なっていたというだけです。

三品 和広 神戸大学名誉教授

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みしな かずひろ / Kazuhiro Mishina

1959年生まれ、愛知県出身。一橋大学商学部卒業。同大学大学院商学研究科修士課程修了。米ハーバード大学文理大学院博士課程修了。同大学ビジネススクール助教授、北陸先端科学技術大学院大学助教授、神戸大学大学院経営学研究科教授などを経て現職。著書多数。経営幹部候補生のために、日本企業のケース464事例を収録した『経営戦略の実戦』シリーズ(全3巻)が2022年5月に完成した。近著に『実戦のための経営戦略論』

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